フリーランスPMはやめとけ?|外部PMに回る案件と、契約が終わる前提

フリーランスPMはやめとけと言われる理由を、PMに固有の事情から整理します。外部PMに回る案件の性質、契約が続きにくい構造、月額と年収の違い、独立前の確認事項を対話形式で解説します。

この記事でわかること

  • フリーランスPMがきついのは、責任は社員PMと同じなのに権限と社内情報は契約の範囲でしか渡されないため
  • 外部に出るPM案件は難しい・急ぎ・荒れているのどれかで、軌道に乗るほど契約は終わりやすい
  • 公開案件の平均は月88万円だが、空白期間や社会保険料を引くと会社員の年収との差は縮まる

永瀬

PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。

ふたば

事業会社でPM7年目。フリーランス向けの案件単価を見て独立を考え始めたが、やめとけという声も多く踏み切れずにいる。

目次
  1. フリーランスPMが「やめとけ」と言われる理由は、PMに固有の話ではない
  2. 外部のPMに回ってくるのは、どんな案件か
  3. うまくいくほど契約が終わる仕事
  4. 月額100万円は、年収1,200万円ではない
  5. それでも独立に向いている人
  6. 独立する前に確かめる四つのこと
  7. 参考データと出典
  8. よくある質問

フリーランスPMの案件一覧を開くと、月額100万円前後の数字が並んでいる。会社員の給与明細と見比べて独立を考え始め、念のため「フリーランスPM やめとけ」と検索する。出てくるのは、収入が不安定、確定申告が面倒、社会的信用が下がる、といった話である。

それらはフリーランス全般の注意点で、エンジニアにもデザイナーにも同じことが言える。PMが独立するときに固有の難しさは、契約の形と、外部のPMに回ってくる案件の性質のほうにある。案件を紹介する側から見えている事情を、順に話していく。

フリーランスPMが「やめとけ」と言われる理由は、PMに固有の話ではない

ふたば(独立を考え始めた事業会社のPM7年目)

PMを7年やってきて、そろそろ独立を考えています。ただ、調べると「フリーランスPMはやめとけ」という記事も多くて、踏み切れずにいます。

永瀬(PM・企画職専門のエージェント)

その手の記事に書いてある理由を挙げてみてください。

ふたば

収入が安定しない、税金や保険の手続きが大変、ローンが組みにくい、あたりです。

永瀬

全部事実ですが、どれもフリーランスという働き方の話です。PMかどうかは関係がない。それを理由にやめるかどうかは、会社員をやめる覚悟の問題なので、私から言うことはあまりありません。

ふたば

PMならではの理由が、別にあるんですか。

永瀬

あります。フリーランスPMがきついのは、責任は社員のPMと同じ重さで求められるのに、権限と情報は契約の範囲でしか渡されないからです。ここを知らずに独立した人が、最初の案件で消耗します。

ふたば

会社員のPMでも、権限が足りないと感じる場面はありますが。

永瀬

程度が違います。社員なら、上司に掛け合う、他部署の同期に聞く、経営会議の資料を読む、という手がある。外部のPMにはそれがない。予算の本当の上限も、役員同士の関係も、過去に同じ案件が一度失敗している事実も、誰かが教えてくれるまで分かりません。

ふたば

それで納期と品質の責任は負う、と。

永瀬

契約上の責任と、現場で期待される責任がずれているのがこの仕事です。準委任契約なので法的に完成の責任は負わない。でも現場では「PMとして来たんですよね」と言われる。

外部のPMに回ってくるのは、どんな案件か

ふたば

案件の中身はどうでしょう。フリーランス向けのPM案件は、社内のPMがやる仕事と同じものですか。

永瀬

同じではありません。会社がPMを外から呼ぶのは、社内で誰も引き受けられないときです。理由は三通りあります。

外部PMを呼ぶ理由現場で起きていること入った人に求められること
人が足りない案件が増えて社員PMの手が回らない既存のやり方に合わせて早く立ち上がる
経験者がいない基幹システムの刷新など、社内に前例がない進め方そのものを持ち込む
引き受け手がいない遅延や対立が起きていて、社員が担当したがらない状況を整理し、止めるか続けるかの判断材料を作る

ふたば

三つめは、なかなか重い案件ですね。

永瀬

重いですが、珍しくありません。順調で見通しの良い案件は、社員に任せて育成の機会にします。外に出てくるPM案件には、難しいか、急ぎか、荒れているかのどれかの事情がついています。

ふたば

募集の文面からは、そこまで読み取れない気がします。

永瀬

読み取れません。募集には「大規模刷新プロジェクトのPM」としか書かれない。だから面談で、前任者がいたか、いたならなぜ交代するのか、今の進捗は計画に対してどうか、を必ず聞いてください。答えが曖昧な案件は、三つめだと思って条件を詰めたほうがいい。

ふたば

荒れた案件は避けるべきですか。

永瀬

避ける必要はありません。立て直しの経験がある人には、むしろ単価を上げやすい案件です。問題は、知らずに入ることです。順調な案件の単価で、荒れた案件を引き受けてしまう。

うまくいくほど契約が終わる仕事

ふたば

契約の続き方はどうでしょう。エンジニアだと、同じ現場に何年もいる人がいますよね。

永瀬

PMはそうなりにくい職種です。エンジニアは開発が続く限り仕事がある。PMは、プロジェクトが軌道に乗ると役割が小さくなります。体制が固まり、会議が回り、課題が減ってくると、発注側は「ここからは社員で見られるのでは」と考え始める。

ふたば

成果を出すと、仕事がなくなる。

永瀬

そういう構造です。契約は3か月ごとの更新が多く、フェーズの切れ目や期の変わり目で終了の話が出ます。能力の評価とは関係なく、予算や体制の都合で決まることも多い。

ふたば

それは精神的にきつそうです。

永瀬

会社員の感覚のままだときついでしょうね。終わることを前提に動く人は、稼働中から次の準備をしています。更新の1か月前には次の候補を並べておく。今の現場には、終了後に別の案件で声がかかる関係を残して出る。

ふたば

営業活動を並行するわけですね。

永瀬

そうです。そしてPMの営業にはもう一つ難しさがあります。実績を見せにくい。エンジニアなら公開したコードや技術記事がありますが、PMの成果物は発注者の社内資料で、守秘義務があるので持ち出せません。

ふたば

言われてみれば、見せられるものが何もありません。

永瀬

だからフリーランスPMの次の仕事は、ほぼ人づてで決まります。前の現場の責任者からの再依頼か紹介、それとエージェント。独立する前に、自分の名前で仕事を頼んでくれそうな人が何人いるかを数えてみてください。ゼロなら、最初の数年は紹介会社への依存度が高くなります。

月額100万円は、年収1,200万円ではない

ふたば

収入の話も聞かせてください。公開されている案件を見ると、会社員よりかなり高く見えます。

永瀬

レバテックフリーランスの公開案件では、PM案件の平均単価は月88万円です(2026年10月閲覧)。12か月分で1,056万円。dodaの調査でプロジェクトマネジャーの平均年収は707万円なので、単純に比べると5割高い。

ふたば

やはり魅力的です。

永瀬

単純に比べると、です。月額の売上と会社員の年収は、同じ物差しではありません。差し引くものを並べます。

  • 契約と契約の間の空白期間(その月の売上はゼロになる)
  • 会社が半分負担していた社会保険料(全額が自己負担になる)
  • 賞与、退職金、有給休暇(休んだ日は売上にならない)
  • 紹介会社を通す場合の手数料(発注額と受取額に差が出る)

ふたば

空白期間は、どのくらい見ておくものですか。

永瀬

人によりますが、計算はしておいてください。月88万円でも、年に2か月空けば売上は880万円です。そこから保険料と経費を引き、会社員なら会社が積んでいた退職金を自分で積む。手元に残る額で比べると、707万円との差はかなり縮まります。

ふたば

それでも独立する意味がある水準というのは。

永瀬

目安として、私たちのネコノテエキスパートは100万円/人月以上の案件だけを紹介しています。月160時間で時給に直すと約6,250円。この水準に届く見込みがないなら、会社員を続けたほうが手取りも安定も上、というのが正直なところです。

ふたば

届く人と届かない人の違いは何ですか。

永瀬

金額の決まり方はフリーランスPMの単価相場で詳しく書いています。分かれ目は、発注者と直接話せる位置で仕事をしてきたかどうかです。元請けの下で進捗を管理してきた経験と、発注者の役員に予算の増額を説明してきた経験では、同じPMでも値段が違います。

それでも独立に向いている人

ふたば

ここまで聞くと、自分に向いているのか分からなくなってきました。

永瀬

向き不向きははっきりあります。面談で独立後もうまくいっている人を見ていると、共通点は三つです。

  • 立ち上げや立て直しのような、短期間で形にする局面が好き
  • 入った現場で、自分の役割と範囲を自分から提案して決められる
  • 契約が終わることを失敗と捉えず、区切りとして扱える

ふたば

逆に、向いていないのは。

永瀬

チームを長く育てたい人、昇進して権限を広げていきたい人です。外部のPMは、どれだけ信頼されても人事権と予算権は持てません。組織を作る仕事がしたいなら、会社の中にいたほうが早い。

ふたば

私は、立ち上げは好きですが、チームへの愛着も強いほうです。

永瀬

それなら、いきなり辞めずに試す手があります。副業で小さい案件を1本受けてみる。週に数時間の関わり方でも、外部の立場で現場に入る感覚は分かります。稼働の小さい案件の条件はPMOの副業単価の記事に書いています。

ふたば

試してから決められるなら、気が楽です。

永瀬

会社員に戻れるかを心配する人も多いですが、戻れます。フリーランスの期間に、どの範囲の責任を引き受けたかを説明できれば、事業会社の選考で不利にはなりません。

独立する前に確かめる四つのこと

ふたば

実際に動くとしたら、何から確かめればいいですか。

永瀬

四つです。一つめは、今の会社の就業規則。副業の可否と、退職後の競業に関する定めを読んでください。今の取引先から独立後に仕事を受けるつもりなら、特に重要です。

ふたば

二つめは。

永瀬

職務経歴を、外部の人に伝わる形で書き直すこと。社内用語と社内の役職を外して、予算規模、体制、自分が決めたことを書く。これを紹介会社に見せると、今の自分にどの単価帯の案件が来るかが分かります。辞める前に相場を知れる。

ふたば

辞めてから登録するものだと思っていました。

永瀬

順番が逆です。提示される単価を見てから、辞めるかどうかを決めればいい。三つめは、収入が途切れても暮らせる期間を数えておくこと。最初の契約が決まるまでと、契約の切れ目の両方に備えが要ります。

ふたば

四つめは。

永瀬

最初の案件を決めてから退職日を決めること。退職してから探すと、焦って条件の悪い案件を受けます。最初の単価は次の案件の交渉の基準になるので、安く始めると取り戻すのに時間がかかる。

ふたば

やめとけ、という言葉の意味が変わりました。独立そのものではなく、知らずに飛び込むのをやめておけ、ということですね。

永瀬

そう受け取ってもらえれば十分です。外部のPMに回ってくる案件の性質と、契約が終わる前提と、手元に残る金額。この三つを分かったうえで独立する人には、私は止める理由がありません。

参考データと出典

フリーランスPMの収入を会社員と比べるときは、売上と給与という別の物差しを比べていることに注意が必要です。

データ数字時点・条件
レバテックフリーランス プロジェクトマネージャー(PM)の案件一覧平均単価 月88万円(最高295万円、最低10万円)2026年10月閲覧。同サイトに掲載された公開案件の月額単価で、受注者の受取実額ではない
doda 平均年収ランキング(2025年)プロジェクトマネジャー 707万円2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した正社員約60万件の申告年収の平均
ネコノテエキスパートの紹介基準100万円/人月以上(月160時間稼働の場合、時給換算で約6,250円)紹介対象を限定する基準で、契約成立や稼働開始を保証するものではない

本文の年間売上は、月額単価に稼働月数を掛けた単純な計算です。社会保険料や税額は所得や家族構成で変わるため、金額は示していません。

よくある質問

フリーランスPMはやめたほうがいいですか?

独立そのものを避ける理由はありません。避けたほうがいいのは、外部のPMに回ってくる案件の性質、契約が数か月単位で終わる前提、売上から差し引かれる費用を知らないまま会社を辞めることです。

フリーランスPMがきついと言われるのはなぜですか?

責任は社員のPMと同じように求められる一方で、権限と社内の情報は契約の範囲でしか渡されないためです。加えて、外部に出てくるPM案件には、難しい、急ぎ、荒れている、のいずれかの事情がついていることが多くあります。

フリーランスPMの収入は会社員より高いですか?

公開案件の平均単価は月88万円(レバテックフリーランス、2026年10月閲覧)で、12か月分では1,056万円になります。ただし契約の空白期間、全額自己負担になる社会保険料、賞与や退職金がないことを差し引くと、会社員の年収との差は縮まります。

フリーランスPMの契約はどのくらい続きますか?

3か月ごとに更新する契約が多く、フェーズの切れ目や期の変わり目で終了の話が出ます。プロジェクトが軌道に乗るとPMの役割は小さくなるため、成果を出した結果として契約が終わることもあります。

フリーランスPMから正社員に戻れますか?

戻れます。フリーランスの期間に、どの範囲の責任を引き受けたかを説明できれば、事業会社の選考で不利にはなりません。迷う場合は、退職する前に副業で小さい案件を1本受けて確かめる方法があります。

この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。

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