事業企画はフリーランスで独立できるか|案件になる経験と月額の目安、独立前に確かめること
事業企画のフリーランス案件が見つかりにくい理由と、事業企画の経験が業務委託の案件になる条件を整理します。社外に持ち出せる経験、月額の目安、個人に依頼が来る場面、独立前の確認事項を対話形式で解説します。
この記事でわかること
- 事業企画の業務委託は「企画」の名前では出にくく、DX推進の支援や事業の立ち上げなど案件の名前で募集されている
- 社外で求められるのは計画を作る人より、決めた方針を現場で動かす人。予算のとりまとめは持ち出しにくい
- 企画系の月額制案件は上限の中央値110万円で稼働100%が中心。辞める前に紹介会社で単価を確かめる
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
メーカーで事業企画8年目。フリーランスとして独立することを考え始めたが、事業企画の案件がほとんど見つからず、自分の経験が社外で通用するのか分からずにいる。
目次
事業企画の経験でフリーランスとして独立できるのか。エンジニアやデザイナーなら案件の一覧がすぐに見つかるのに、「事業企画 フリーランス」で探しても、出てくる案件は少ない。
事業計画も予算も、自社の数字と決裁者を知っているから作れるもので、社外でそのまま売れるとは考えにくい。その直感は半分当たっている。残りの半分は、事業企画の経験が「企画」とは別の名前で募集されているという事情にある。
事業企画のフリーランス案件が見つからないのは、探す言葉が違うから
ふたば(独立を考え始めたメーカーの事業企画8年目)
メーカーで事業企画を8年やっています。フリーランスとして独立することを考えているのですが、事業企画の案件がほとんど見つかりません。
永瀬(PM・企画職専門のエージェント)
どんな言葉で探しましたか。
ふたば
「事業企画 フリーランス」「企画 業務委託」です。件数が少なくて、独立しても仕事がないのではと不安になりました。
永瀬
企画という名前で出る案件は、たしかにわずかです。当社で扱っている業務委託の案件124件を、職種の分類で数えるとこうなります。
| 職種の分類 | 件数(延べ) | 案件名に多い言葉 |
|---|---|---|
| 企画系(業務企画、経営企画、事業企画、新規事業開発、商品企画、営業企画) | 22件 | DX推進の伴走支援、業務改善、AI活用の推進、事業の立ち上げ |
| PM、PMO | 23件 | プロジェクトマネージャー、導入の推進役 |
| コンサル | 22件 | 業務コンサルタント、構想策定の支援 |
ふたば
企画系は22件。案件名には、企画という言葉が入っていないんですね。
永瀬
PMやコンサルに分類された案件の中にも、事業企画の経験者が担える仕事が混ざっています。発注する会社は「企画職を探している」とは考えていません。「この案件を前に進めてくれる人」を探していて、その人の出身がたまたま事業企画なのです。
ふたば
職種ではなく、案件の名前で探すんですね。
永瀬
そうです。「DX推進 支援 業務委託」「業務改善 業務委託」「新規事業 立ち上げ 業務委託」のように、やることの名前で探してください。それでも公開されている件数は多くないので、紹介会社への登録を並行するのが現実的です。
社外に持ち出せる経験と、持ち出せない経験
ふたば
見つかったとして、自分の経験が通用するのかが不安です。私の仕事は、自社の数字と社内の事情を知っているから成り立っています。
永瀬
その不安は正しいです。事業企画の仕事には、社外に持ち出せる部分と持ち出せない部分があります。
| 仕事 | 持ち出せるか | 理由 |
|---|---|---|
| 予算のとりまとめ、会議資料の作成 | 持ち出しにくい | 社内の数字と決裁の流れを知っていることが価値の中心 |
| 市場調査、事業計画の作成 | 持ち出せる | 調べ方と組み立て方は、どの会社でも同じ |
| 新規事業や業務改革の推進 | 持ち出せる | 関係者を集め、決めて、進める手順は会社が変わっても使える |
| 経営者への助言 | 経験による | 同じ規模、同じ業界で事業を見てきた人に限られる |
ふたば
いちばん時間を使っている予算のとりまとめが、持ち出しにくい側にあります。
永瀬
多くの事業企画がそうです。通常業務の外でやった仕事を思い出してください。新しい販路の検討、子会社の立ち上げ、基幹システムの入れ替えで業務側の代表を務めた、といった経験です。
ふたば
3年前に、新規事業の検討チームを率いました。事業計画を書いて役員会を通し、初年度の体制を作るところまで担当しました。
永瀬
それが売れる経験です。体制を作るところまでやっているのが大きい。面談で発注側が聞くのは「計画を通したあと、どうなりましたか」なので。
ふたば
計画書の出来よりも、そのあとを聞かれる。
永瀬
業務委託で求められるのは、計画を作る人より、決めた方針を現場で動かす人です。計画づくりだけなら、発注側には社員に任せるか、コンサルティング会社に頼むかの選択肢があります。個人に頼むのは、手を動かして前に進める人が社内で足りないときです。
コンサルティング会社ではなく、個人に頼む理由
ふたば
コンサルティング会社と競合するなら、個人は不利ではないですか。
永瀬
計画を作る仕事では不利です。調査の人手も、報告書の体裁も、会社には敵いません。個人が選ばれるのは、別の場面です。
- 計画はもうあり、足りないのは社内で進める人である
- コンサルティング会社に頼むほどの予算がついていない
- 報告書ではなく、会議に出て部門間の調整まで引き受けてほしい
ふたば
三つめは、事業企画が日常的にやっていることです。
永瀬
だから事業企画の出身者は、推進の案件で評価されます。事業会社の中で、営業、開発、経理のあいだを調整してきた経験は、コンサルティング会社の出身者が持っていないことが多い。発注側の部長から見ると、社内の事情が分かる人のほうが使いやすいのです。
ふたば
強みは、分析ではなく調整のほうにあると。
永瀬
分析もできて、調整もできる。その組み合わせです。発注側がコンサルティング会社に支払う費用の内訳はPM代行の費用相場に書いています。個人の月額がその金額と比べられていると知っておくと、交渉のときに役立ちます。
事業企画のフリーランスで受け取れる月額
ふたば
報酬の水準を知りたいです。
永瀬
事業企画だけを切り出した公開の統計はないので、近い数字を並べます。当社の業務委託案件のうち、職種分類が企画系かコンサルで月額制のものは15件あり、上限の中央値は110万円でした。幅は80万円から160万円です。
ふたば
会社員としての年収と比べると、どうでしょう。
永瀬
事業企画の正社員求人320件では、提示年収の下限の中央値が600万円、上限の中央値が1,000万円でした。12で割ると、月に50万円から83万円です。
ふたば
業務委託のほうが、月額では高いですね。
永瀬
額面では高い。ただし、会社員の年収には会社が負担する社会保険料、有給休暇、仕事がない月の給与が含まれています。業務委託にはどれもありません。契約と契約の間に2か月空けば、月額110万円でも年間の売上は1,100万円です。
ふたば
稼働はどのくらいを求められますか。
永瀬
月額制の15件のうち、稼働の記載がある10件では8件が稼働100%でした。事業企画の経験で月額100万円前後を受け取る案件は、一社にほぼ専念する推進役が中心です。週2日の案件を組み合わせて同じ額にする、という設計は成り立ちにくい。
ふたば
目指す水準の目安はありますか。
永瀬
私たちのネコノテエキスパートが紹介しているのは、100万円/人月以上の案件だけです。月160時間で割ると時給約6,250円。事業企画の経験でこの水準に届く人は、推進の実績を案件の名前で説明できる人です。
独立する事業企画が気をつけること
ふたば
独立にあたって、事業企画ならではの注意点はありますか。
永瀬
一つあります。あなたは前の会社の未公開の数字を知っている。中期計画、事業ごとの採算、検討中の提携。助言の中身そのものが、前職で得た知識と地続きになります。
ふたば
たしかに、社外に出せない情報ばかり扱ってきました。
永瀬
同じ業界、同じ顧客を持つ会社の案件は、独立した直後は受けないほうが安全です。退職するときに、競業に関する定めと秘密保持の範囲を必ず読んでください。
ふたば
業界を変えると、経験が生きないのではないですか。
永瀬
生きます。持ち出せるのは業界の知識ではなく、進め方のほうなので。メーカーで新規事業を立ち上げた人が、小売業の新規事業を手伝う。数字の組み立て方と、社内の通し方は同じです。
ふたば
もう一つ気になるのは、肩書きです。フリーランスの事業企画、と名乗ればいいのでしょうか。
永瀬
名乗っても案件は来にくいです。発注側が検索する言葉ではないので。経歴の冒頭に、担える案件の名前を書いてください。「新規事業の立ち上げ推進」「業務改革のPMO」のように。事業企画は、その根拠となる経歴として下に書く。
独立の前に確かめる四つのこと
ふたば
辞める前に、何を確かめればいいですか。
永瀬
順番に四つです。
- 職務経歴を、社外の人に伝わる言葉で書き直す(社内の部署名と会議名を外し、事業の規模、自分が決めたこと、結果の数字を書く)
- 持ち出せる経験を一つに絞る(新規事業の立ち上げ、業務改革の推進など、案件の名前で言える形にする)
- その経歴を紹介会社に見せ、どの単価帯の案件が来るかを確かめる
- 最初の案件を決めてから、退職日を決める
ふたば
一つに絞るのは、機会を減らしませんか。
永瀬
逆です。「企画全般できます」と書いた経歴には、案件を当てようがありません。「新規事業の計画を役員会に通し、初年度の体制まで作った」と書いてあれば、同じ状況の会社に紹介できます。
ふたば
辞める前に紹介会社に見せる、というのは考えていませんでした。
永瀬
順番として、そちらが先です。月額100万円に届く話が来ないなら、足りないのは推進の実績です。今の会社で、計画のあとの実行まで担当できる案件を取りにいくほうが、独立より先になります。
ふたば
経営企画の同僚も独立を考えています。同じ考え方でいいのでしょうか。
永瀬
声がかかる案件が違います。事業企画は推進の案件、経営企画は管理会計や予算の仕組みづくりの案件です。二つの職種の線引きは経営企画と事業企画の違いで書いています。外部の立場で働く難しさはフリーランスPMはやめとけと言われる理由に、プロダクト側の単価はPdMの業務委託の単価相場にあります。
ふたば
事業企画の仕事は社外では売れないと思い込んでいました。売れないのは予算のとりまとめで、新規事業を立ち上げた経験は別の名前で求められている。
永瀬
その理解で合っています。探す言葉を案件の名前に変えて、経歴を一つの経験に絞る。そのうえで、辞める前に単価を確かめてください。
参考データと出典
事業企画のフリーランスや業務委託を単独で集計した公開統計は見当たらず、以下は近い対象の数字を並べたものです。
| データ | 数字 | 時点・条件 |
|---|---|---|
| ネコノテキャリア求人データベース(業務委託) | 有効な業務委託案件124件。職種分類が企画系(業務企画9、経営企画4、事業企画3、新規事業開発3、商品企画2、営業企画1)の案件は延べ22件(18案件)、PMとPMOは延べ23件、コンサルは22件。企画系またはコンサルの月額制15件は上限中央値110万円(幅80万〜160万円)で、稼働の記載がある10件のうち8件が稼働100% | 2026年10月時点。1件に複数の職種分類が付くため延べ数。企画系のうち2件はインターンの募集。募集時の提示額で、契約時の実額ではない |
| ネコノテキャリア求人データベース(事業企画正社員) | 正社員求人320件。提示年収の下限中央値600万円、上限中央値1,000万円 | 2026年10月時点。タイトルに「事業企画」を含む有効な正社員求人のうち年収表記のあるもの。提示レンジの中央値で内定時の実額ではない |
| doda 平均年収ランキング(2025年) | 経営企画/事業企画 703万円 | 2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した正社員約60万件の申告年収の平均 |
| ネコノテエキスパートの紹介基準 | 100万円/人月以上(月160時間稼働の場合、時給換算で約6,250円) | 紹介対象を限定する基準で、市場の平均ではない |
本文の月額換算は年収を12で割った計算値、年間売上は月額に稼働月数を掛けた計算値です。持ち出せる経験の区分と、個人に依頼される場面の整理は、当社が面談と案件の依頼内容から整理した傾向で、統計ではありません。
よくある質問
事業企画の経験でフリーランスになれますか?
なれます。ただし「事業企画」という名前の案件は少なく、DX推進の伴走支援、業務改善、事業の立ち上げといった名前で募集されています。当社の業務委託案件124件のうち、職種分類が企画系のものは延べ22件でした(2026年10月時点)。
事業企画のフリーランス案件はどこで探せますか?
「DX推進 支援 業務委託」「新規事業 立ち上げ 業務委託」のように、やることの名前で探すと見つかりやすくなります。公開されている件数は多くないため、紹介会社への登録を並行することを勧めます。
事業企画のフリーランスの単価はどのくらいですか?
事業企画だけの公開統計はありません。当社の業務委託案件では、職種分類が企画系またはコンサルの月額制15件で、上限の中央値が110万円でした(2026年10月時点、幅80万〜160万円)。稼働の記載がある10件のうち8件は稼働100%です。
事業企画のどんな経験がフリーランスで評価されますか?
新規事業の立ち上げ、業務改革の推進のように、通常業務の外で担った経験です。計画を作っただけでなく、決めた方針を現場で動かしたところまで説明できると評価されます。予算のとりまとめや会議資料の作成は、社外では評価されにくくなります。
事業企画から独立する前に、何を確かめればいいですか?
職務経歴を社外に伝わる言葉で書き直し、紹介会社に見せて、どの単価帯の案件が来るかを確かめてください。最初の案件が決まってから退職日を決めると、焦って条件の悪い案件を受けずに済みます。競業と秘密保持の定めも退職前に確認が必要です。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。