情シスが嫌われる・無能と言われる理由|現場との溝を埋める立ち回り

情シスが社内で嫌われる、無能と言われる理由は、現場と経営で違います。決めていないルールの顔にならない断り方、経営に伝わる報告の書き方、立ち回っても変わらない会社の見分け方を、PM専門エージェントが解説します。

この記事でわかること

  • 面談で聞く範囲では、現場の嫌いは待たされた不満と断られた不満、経営の無能はIT費用の効果が見えない不満
  • 断るときは規程と承認者、例外の手続き、代わりの手段を添え、例外の判断を役員や部門長に戻してもらう
  • ルールの名義、優先順位を決める場、投資の相談、評価の項目の四つで、立ち回っても変わらない会社の見当がつく

どろん先輩

PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。

はじめ

従業員約700人のメーカーで、4人の情シスの3年目。ツールの申請を規程どおりに断ったら営業課長に「止めるだけ」と言われ、経営会議では社長に「何をやっているのか分からない」と言われた。社内で無能と言われるのは自分のせいなのか分からずにいる。

目次
  1. 情シスが嫌われる・無能と言われる理由は、言う人によって違う
  2. 現場に嫌われるのは、自分が決めていないルールの顔になるから
  3. 待たされる不満は、解決の速さより「いつ返るか」で減る
  4. 経営に「無能」と言われるとき、作業時間の報告では評価が変わりにくい
  5. 立ち回っても変わらない会社は、四つの点で見分ける
  6. 動くなら、嫌われた経験は面接で話せる材料になる
  7. 参考データと出典
  8. よくある質問

情シスとして社内の問い合わせに応え、セキュリティのルールを守らせ、障害を起こさないように動いているのに、現場からは嫌われ、上からは「無能」と言われる。どちらも同じ不満に聞こえるが、言っている人も、その人が困っていることも違う。分けて見ると、担当者の立ち回りで変えられる部分と、どう動いても変わらない会社が見えてくる。

はじめ(従業員約700人のメーカーで情シス3年目)

どろん先輩、聞いてください。先週、営業部から新しいファイル共有サービスを使いたいと申請があって、社内のルールに合わないので断ったんです。そうしたら営業課長に「情シスは止めるだけで何もしてくれない」と言われました。

どろん先輩(PM専門エージェント)

言われた側はこたえますね。ほかにも何か言われていますか。

はじめ

先月の経営会議で、社長が「情シスは何をやっているのか分からない。IT費用ばかり増える」と言っていたと、上司から聞きました。社内の雑談で「情シスは無能」と言われているのも知っています。4人で全社の問い合わせとPCと基幹システムを見ていて、手を抜いているつもりはないんですが。

どろん先輩

二つの話が混ざっています。営業課長の言葉と社長の言葉は、同じ「情シスはだめだ」に聞こえても、困っていることが違う。分けずに手を打つと、どちらにも効きません。

情シスが嫌われる・無能と言われる理由は、言う人によって違う

現場が情シスを嫌うのは待たされたことと断られたことへの不満で、経営が「無能」と言うのは、IT費用で何が変わったか分からないことへの不満である(当社の面談で聞いてきた範囲で、統計ではない)。同じ「業務が見えない」も、現場にとっては自分の依頼の状況、経営にとっては費用の使い道と効果の話で、打つ手が違う。

はじめ

検索すると、業務が見えない、対応が遅い、売上を生まないコスト部門、という理由がよく出てきます。

どろん先輩

どれも本当に言われていることです。ただ、その三つも、言う人で分けたほうが手を打てます。当社の面談で情シスの方から聞いてきた話を並べると(統計ではありません)、だいたいこうなります。

言う人よく出る言葉その人が実際に困っていること
現場の社員「遅い」「いつまで待てばいいのか」仕事が止まっていて、いつ動けるか分からない
現場の部門長「止めるだけ」「融通がきかない」使いたいものを、理由も代わりも知らされずに断られた
経営「何をやっているか分からない」「費用ばかり増える」IT費用で会社の何が良くなったかを説明されていない

はじめ

確かに、営業課長は断られたことに怒っていて、社長はお金の話をしていました。

どろん先輩

現場の不満は、毎日の問い合わせや申請で生まれます。経営の不満は、年に数回の予算と報告の場で生まれる。情シスとの接点が違うので、打つ手も別になります。

現場に嫌われるのは、自分が決めていないルールの顔になるから

情シスが現場に嫌われる場面の多くは、承認者も代わりの道も示さずに断り、自分が決めていないルールの持ち主に見えてしまう場面である(当社の面談で聞いてきた範囲で、統計ではない)。断るときに規程と承認者、例外の手続き、代わりの手段を添え、例外の判断を役員や部門長に戻してもらうことが、担当者にできる立ち回りになる。

はじめ

営業課長の件は、ルールどおりに断っただけです。それでも嫌われるのは仕方ないんでしょうか。

どろん先輩

断ったこと自体より、断り方で嫌われている可能性が高いと私は見ています。何と言って断りましたか。

はじめ

「そのサービスは社内のルールで使えません」と返しました。

どろん先輩

そのルールは、誰が決めたものですか。

はじめ

情報セキュリティの規程で、作ったのは前任の課長です。承認は、たぶん役員会だったと思います。

どろん先輩

営業課長から見ると、そのルールは情シスが決めて、情シスが止めているものに見えています。承認したのが役員会なら、情シスは決めた側ではなく、運用している側です。それでも、決めた人の名前を出さずに断ると、断った人がルールの持ち主に見えます。

はじめ

じゃあ、どう断ればよかったんですか。

どろん先輩

断る言葉に、四つを添えて返します。どの規程か、誰が承認したか、例外を認める手続きと承認者、代わりに使えるもの。

添えるもの営業課長の件での返し方
どの規程か情報セキュリティ規程の、社外のクラウドサービスの利用を定めた条
誰が承認したか役員会で承認された規程であること
例外の手続き部門長が申請し、管理担当の役員が判断する(決まっていなければ、決めてもらう)
代わりに使えるもの会社で契約しているファイル共有で、社外の人にファイルを渡す方法

はじめ

例外の承認者は、決まっていない気がします。今は、情シスがだめと言えばだめ、という運用です。

どろん先輩

そこを決めてもらうのが、担当者にできるいちばん大きな立ち回りです。セキュリティの対策は経営が主導して進めるもの、という考え方は、IPA(情報処理推進機構)の中小企業向けのガイドラインも示しています。例外を認めるかを役員や部門長が判断する形にすれば、断る判断の重さが本来の持ち主に戻り、情シスの仕事は判断に要る材料をそろえることになります。

はじめ

上司に話してみます。ただ、役員が「それは情シスで決めて」と言ったら、どうなりますか。

どろん先輩

断る役を、会社として情シスに預けている、ということです。その会社では、断り方をどれだけ工夫しても、嫌われ役は情シスから動きません。

待たされる不満は、解決の速さより「いつ返るか」で減る

現場の「遅い」には、解決までの時間だけでなく、受け取られたのか、いつ返ってくるのかが分からない時間への不満が含まれている(編集部の見立て)。解決の速さは人数で決まるが、受付を1か所に寄せて目安の日を返すことは、担当者の段取りで変えられる。

はじめ

「遅い」のほうは、人を増やすしかないと思っていました。4人で700人を見ているので。

どろん先輩

人が足りないのは本当かもしれません。ただ、依頼を出した側は、受け取られたのかも、いつ返ってくるのかも分からないまま待っていると、同じ1日でも長く感じます。

はじめ

問い合わせは、メールと電話とチャットと、廊下で声をかけられるのが混ざっていて、受けたと返していないものもあります。

どろん先輩

そこは明日から変えられます。受付を1か所に寄せて、受けたらすぐ「受け付けました。目安は○日です」と返す。目安を守れないときは、その日が来る前に一度連絡する。

はじめ

去年、勤怠のシステムを入れ替えたときに「使いにくい」と言われたのも、こたえました。

どろん先輩

使いにくいと言われるシステムは、導入を決める前に、毎日使う人の作業を見ていないことが多いと編集部は見ています。次に何かを入れるときは、使う部署から1人ずつ、試してもらう人を出してもらってください。その人が「この画面で困る」と言った点は、導入前に直すか、直せない理由を返す。入れたあとで言われる不満は情シスに向きますが、決める前に聞いた不満は、一緒に決めた話になります。

はじめ

外部の会社にヘルプデスクを任せる、という話も記事で読みました。

どろん先輩

問い合わせを外に出せば、待たされる不満は減るかもしれません。ただ、断られた不満と使いにくい不満は残ります。どちらも社内のルールと社内のシステムの話で、決めるのは社内だからです。外に出すか人を増やすかは会社が決めることで、担当者にできるのは、問い合わせの件数と中身を記録して上司に渡すところまでです。

経営に「無能」と言われるとき、作業時間の報告では評価が変わりにくい

経営が「何をやっているか分からない」と言うときに知りたいのは、情シスが忙しいかどうかではなく、IT費用で会社の何が良くなったかである(編集部の見立て)。対応件数や作業時間は、経営会議で使われている言葉に置き換えて報告する。

はじめ

社長の「何をやっているか分からない」のほうは、業務を見える化すればいいと思っていました。月に何件対応して、何時間かかったかを報告するとか。

どろん先輩

よく勧められるやり方ですし、件数を数えること自体は役に立ちます。ただ、件数と作業時間をそのまま経営に出しても、「何をやっているか分からない」は変わりにくい。

はじめ

どうしてですか。

どろん先輩

作業時間は忙しさの証明にしかならないうえに、「そんなに手がかかるなら外に頼めばいい」という問いも呼びやすいからです(編集部の見立てです)。

はじめ

報告したら、本当にそう言われそうです。

どろん先輩

報告は、相手の部署の言葉に置き換えます。数字は説明のための架空の例ですが、こういう形です。

作業時間の報告相手の言葉に置き換えた報告
PCの準備 月20台、40時間入社した人が、初日の午前から仕事を始められた(以前は2日目から)
問い合わせ対応 月300件経理の締め日の問い合わせに当日中に答え、締めが遅れた月はなかった
ノートPCの暗号化の設定社外でのノートPCの紛失が2件あったが、中のデータは読めない状態だった

はじめ

うちの社長に出すなら、何に置き換えればいいですか。

どろん先輩

経営が毎月気にしている言葉で書きます。経営会議で毎月出ている数字は何ですか。

はじめ

受注と出荷と、残業時間だと思います。

どろん先輩

それなら、出荷を遅らせたシステムの停止はゼロだった、残業の多い部署の手作業を月に何時間減らした、と書けば、経営会議の言葉で情シスの仕事が見えます。逆に、そう書ける仕事が一つも見つからないなら、報告の書き方ではなく、経営に何を頼まれているかを確かめ直す時期です。

立ち回っても変わらない会社は、四つの点で見分ける

断り方や報告を変えても、会社がルールの判断と依頼の優先順位を情シスに預けたままなら、嫌われ役は情シスから動かない(編集部の見立て)。ルールの名義、優先順位を決める場、投資の相談、評価の項目の四つは、何かを試す前から今の職場を見て確かめられる。

はじめ

ここまでやっても、嫌われたまま、無能と言われたままの会社もありますよね。

どろん先輩

あります。今の職場を見るだけで、かなり見当がつきます。

見る点変わる見込みがある会社変わりにくい会社
ITのルールの名義規程に承認者がいて、例外の判断を役員や部門長がする情シスの判断で止めていて、「情シスで決めて」と返される
依頼の優先順位どの依頼を先にするかを決める会議や担当役員がいる声の大きい部署の依頼が先になる
IT投資の決め方新しいシステムを契約する前に情シスに相談がある現場が契約したあとで、運用だけが情シスに回ってくる
情シスの評価障害がないこと以外にも評価の項目がある障害が起きたときだけ話題になる

はじめ

うちは、上の二つが変わりにくい側です。

どろん先輩

上の二つは、断る役を誰が持つかの話です。ここが変わりにくい側にある会社では、断り方がどれだけ丁寧でも、断る顔は情シスのままになります。下の二つは評価の話で、情シスの責任者が誰に報告しているかで決まる構造を社内SEはやめとけと言われる理由で書いています。

はじめ

上の二つを変えてほしいと、上司に頼む価値はありますか。

どろん先輩

あります。例外の承認者を決める話は、上司にとっても断る責任を一人で負わずに済む話なので、通りやすいほうだと編集部は見ています。半年たっても承認者が決まらず、優先順位を決める場もできないなら、断る役を情シスに預けたままにする会社だと読んでいいと思います。

動くなら、嫌われた経験は面接で話せる材料になる

当社の面談で情シスの方の選考を見てきた範囲では(統計ではない)、嫌われた経験そのものは面接でまず問われず、聞かれるのは、現場と意見が分かれたときにどう合意まで持っていったかである。移るなら、決まったルールを運用する席より、ルールや投資を決める場に出られる席を選ぶ。

はじめ

もし移るとしたら、情シスで嫌われていたというのは、マイナスになりませんか。

どろん先輩

嫌われたこと自体を聞かれることは、まずありません(面談で見てきた範囲で、統計ではありません)。聞かれるのは合意の取り方なので、ルールで断った件を、承認者を決めてもらい、例外の手続きを作った話に変えられれば、それがそのまま面接の答えになります。

はじめ

求人は、どういうものを見ればいいですか。

どろん先輩

当社の求人データベースで、2026年10月時点の、タイトルに社内SE、情シス、情報システムのいずれかを含む正社員求人は1,331件あります。提示年収の中央値は下限500万円、上限750万円です。タイトルの言葉で分けると、差が出ます。

求人の区分件数下限の中央値上限の中央値
社内SE、情シス全体1,331件500万円750万円
タイトルに運用、保守、ヘルプデスクなどを含む203件450万円650万円
タイトルに企画、DX、推進、プロジェクトなどを含む415件500万円800万円

どろん先輩

企画寄りの求人は運用中心の求人より上限の中央値が150万円高い一方で、決める場に本当に出られるかは求人票だけでは分かりません。面接で、例外の承認を誰がしているか、IT予算を誰が決めているかを聞いてください。

はじめ

DX推進の求人も見ています。

どろん先輩

DX推進の席は、成果を測る物差しがあるかで当たり外れが分かれます。見分け方はDX推進はやめとけと言われる理由に、情シスの求人票の読み方と選考の準備は情シスへの転職ガイドにまとめています。

はじめ

まずは、例外の承認者を決めてもらうよう上司に頼んでみます。営業課長にも、規程と承認者と代わりの方法を添えて、もう一度返事をします。

どろん先輩

そうしてください。それで営業課長の機嫌がすぐ直るとは限りません。それでも、断る判断の持ち主が規程の上ではっきりすれば、残った不満がはじめさん個人に向いたものか、会社のルールに向いたものかを分けて見られるようになります。

参考データと出典

データ数字時点・条件
ネコノテキャリア求人データベース(2026年10月時点)社内SE、情シス 1,331件(767社)、提示年収の中央値 下限500万円・上限750万円、上限1,000万円以上は17%タイトルに「社内SE」「情シス」「情報システム」のいずれかを含む有効な正社員求人のうち、年収表記のあるもの
ネコノテキャリア求人データベース(2026年10月時点)運用中心 203件(163社)、提示年収の中央値 下限450万円・上限650万円上の条件のうち、タイトルに「ヘルプデスク」「運用」「保守」「キッティング」「サポート」のいずれかを含み、「企画」「DX」「PM」「プロジェクト」「戦略」「推進」「刷新」を含まないもの
ネコノテキャリア求人データベース(2026年10月時点)企画寄り 415件(280社)、提示年収の中央値 下限500万円・上限800万円上の条件のうち、タイトルに「企画」「DX」「PM」「プロジェクト」「戦略」「推進」「刷新」のいずれかを含み、「ヘルプデスク」「運用」「保守」「キッティング」「サポート」を含まないもの
IPA(情報処理推進機構)中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版経営者向けの指針として、情報セキュリティ対策を経営者が主導して進める考え方を示している

求人の数字は、いずれも求人に書かれた提示レンジの中央値で、内定時の実額ではない。同じ企業が拠点別・等級別に出した求人を別件として数えている。本文の「作業時間の報告」を置き換えた表の数字は、説明のための架空の例である。

よくある質問

情シスが社内で嫌われるのはなぜですか?

当社の面談で聞いてきた範囲(統計ではありません)では、現場の不満は、依頼のあといつ返ってくるか分からないまま待たされることと、理由や代わりの方法を知らされないまま断られることから生まれがちです。特に、情シスが決めたのではないセキュリティのルールを、承認者や例外の手続きを示さずに断ると、情シスがルールの持ち主に見えて不満が集まります。

情シスが無能と言われるのはなぜですか?

経営が「無能」と言うときは、IT費用で会社の何が良くなったかを説明されていないことへの不満であることが多いと、編集部は見ています。対応件数や作業時間の報告は忙しさを示すだけなので、入社した人が初日から働けた、締めが遅れなかったなど、経営会議で使われている言葉に置き換えて報告します。

情シスが嫌われないために、担当者が自分でできることは何ですか?

断るときは、どの規程か、誰が承認したか、例外の手続きと承認者、代わりに使えるものを添えて返します。問い合わせは受付を1か所に寄せ、受けたらすぐ目安の日を返します。新しいシステムを入れるときは、使う部署から試す人を出してもらい、導入前に困る点を聞きます。

業務を見える化すれば、情シスの評価は上がりますか?

件数を数えることは役に立ちますが、件数や作業時間をそのまま経営に出しても評価は変わりにくいと、編集部は見ています。作業時間は忙しさの証明にしかならず、外に頼めばよいという問いも呼びやすいためです。相手の部署の言葉で、何が良くなったかに置き換えて報告します。

立ち回っても変わらない会社は、どう見分けますか?

ITのルールを情シスの判断で止めている、依頼の優先順位を決める場がない、システムを契約したあとで運用だけが回ってくる、障害が起きたときだけ話題になる、の四つを見ます。例外の承認者を決めてほしいと頼み、半年たっても承認者が決まらず、優先順位を決める場もできないなら、断る役を情シスに預けたままにする会社だと編集部は見ています。

登場人物は架空です。

この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。

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