社内SEはやめとけと言われる理由|外れの席に共通する三つの条件と、応募前の見分け方
社内SEはやめとけと言われる理由を、雑用、評価、技術の三つに分けて整理します。求人1,349件の年収データ、外れの席の条件、応募前に確かめる質問をPM・企画職専門エージェントが対話形式で解説します。
この記事でわかること
- やめたほうがいいのは社内SEという職種ではなく、雑用、評価、技術の三つの原因が全部そろっている席
- 社内SE求人で上限1,000万円以上は17%。運用やヘルプデスク中心の求人は下限450万円、上限650万円にとどまる
- 評価は情シスの責任者の報告先で、技術は判断を外部に預けているかで決まり、どちらも応募前に確かめられる
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
SIerで受託開発のSE6年目。納期前の残業と客先対応に疲れて社内SEへの転職を考えているが、やめとけという声が多く応募に踏み切れずにいる。
目次
SIerで残業と客先対応が続くと、社内SEの求人が魅力的に見えてくる。自社のシステムを落ち着いて担当できそうだと思って調べ始めると、「社内SE やめとけ」という検索候補が出てくる。理由として並んでいるのは、雑用が多い、評価されない、技術が身につかない、の三つである。
三つとも事実だが、当てはまるのは社内SEの求人の一部で、当てはまらない席も同じ「社内SE」の名前で募集されている。求人を紹介する側から見ると、外れを引く人には応募の動機に共通点がある。
社内SEが「やめとけ」と言われる理由は、三つに分けられる
ふたば(社内SEへの転職を考えるSIerのSE6年目)
SIerで6年、受託開発のSEをしています。納期前の残業と客先対応に疲れて、社内SEに移りたいと考えています。ただ、検索すると「やめとけ」という記事ばかり出てきます。
永瀬(PM・企画職専門のエージェント)
記事に書いてあった理由を教えてください。
ふたば
パソコンの設定や問い合わせ対応ばかりになる。売上を生まない部署なので評価も給料も上がらない。開発をしなくなって技術が古くなる。この三つでした。
永瀬
どれも本当に起きています。ただ、三つは別々の原因から来ているので、まとめて「社内SEは」と語ると判断を間違えます。
| 言われていること | 原因 | 起きる会社 |
|---|---|---|
| 雑用が多い | 情シスの人数が少なく、問い合わせ窓口と兼任になる | 従業員数に対してIT担当が極端に少ない会社 |
| 評価されない | 情シスが総務や管理部門の下にあり、障害がないことだけが成果になる | ITを費用として扱っている会社 |
| 技術が身につかない | 開発と構築をすべて外部に任せ、社内には窓口だけが残る | 丸投げの体制が長く続いている会社 |
ふたば
会社によって違う、という話ですか。
永瀬
会社によって違う、で終わらせると何も選べません。やめたほうがいいのは社内SEという職種ではなく、三つの原因が全部そろっている席です。そして、そろっているかどうかは応募する前にかなりの程度まで確かめられます。
「楽そうだから」で選んだ人が、いちばん外れを引く
ふたば
正直に言うと、今より楽になりたいという気持ちが動機の半分です。
永瀬
その動機は珍しくありませんし、責めるつもりもありません。問題は、楽な席を探すと運用とヘルプデスクの求人に行き着くことです。残業が少なく、納期がなく、技術の要求が低い求人を選んでいくと、最後に残るのはそこなので。
ふたば
求人を絞る条件が、そのまま外れの条件になっている。
永瀬
そうです。当社の求人データベースで、タイトルに社内SE、情シス、情報システムのいずれかを含む正社員求人は1,349件あります。提示年収の下限の中央値は500万円、上限の中央値は750万円でした。
ふたば
思っていたより低くはないです。
永瀬
平均で見るとそう見えます。タイトルの言葉で分けると景色が変わります。
| 求人の区分 | 件数 | 下限の中央値 | 上限の中央値 | 上限1,000万円以上の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 社内SE、情シス全体 | 1,349件 | 500万円 | 750万円 | 17% |
| タイトルに運用、保守、ヘルプデスク、サポートを含む | 214件 | 450万円 | 650万円 | 12% |
| タイトルに企画、DX、推進、プロジェクトなどを含む | 410件 | 500万円 | 800万円 | 19% |
| 参考:プロジェクトマネージャー求人 | 573件 | 600万円 | 1,000万円 | 60% |
ふたば
運用と企画で、上限が150万円違いますね。
永瀬
入社時の差としては小さく見えますが、効いてくるのはその先です。運用の席で5年過ごした人が次に応募できるのは、また運用の席になります。社内SEの求人で上限が1,000万円を超えるのは全体の17%で、プロジェクトマネージャー求人の60%と比べると、天井が低い職種なのは数字のうえでも事実です。
ふたば
楽さを取ると、天井の低いほうへさらに寄っていく。
永瀬
面接でも同じことが起きます。企画寄りの求人ほど、志望動機に「落ち着いて働きたい」がにじむ人を落とします。企業が社内SEを中途で採るのは、止まっている刷新や、手つかずの業務改善を動かしたいからです。休みたい人を採りたい会社はありません。
評価されにくいのは、情シスが置かれている場所の問題
ふたば
評価の話も気になります。障害を起こさなくて当たり前、というのはSIerの運用チームでも聞く話です。
永瀬
構造は同じですが、社内SEのほうが逃げ場がありません。SIerなら運用は売上の立つ契約です。社内の情シスは、どれだけ安定させても売上は一円も増えない。費用の部署として予算を削られる側に立ちます。
ふたば
それは、どの会社の情シスでも同じではないですか。
永瀬
同じではありません。見るべきは、情シスの責任者が誰に報告しているかです。総務部長や管理本部長の下にある情シスは、費用の管理が仕事になります。CIOやCDOがいて経営会議に議題を出せる情シスは、投資を提案する側に回れます。
ふたば
組織図で分かるんですね。
永瀬
求人票にも出ます。配属先の欄が「管理本部 総務部 情報システム課」なら前者、「IT戦略部」「DX推進本部」なら後者の可能性が高い。名前だけ変えた会社もあるので、面接でIT予算を誰が決めているかを聞いてください。
ふたば
前者の会社に入ってしまうと、どうなりますか。
永瀬
提案が通りません。古い基幹システムを入れ替えたいと言っても、動いているものになぜ金をかけるのかと返されます。評価されないのは仕事の中身のせいではなく、成果を投資として受け取る人が上にいないからです。本人の努力で変えられる範囲を超えています。
技術が止まるかどうかは、外注の使い方で決まる
ふたば
三つめの、技術が身につかないという話はどうでしょう。コードを書かなくなるのは覚悟しています。
永瀬
コードを書かなくなること自体は、市場での評価を下げません。社内SEの価値は実装ではなく、何を作るかを決めることにあるので。下がるのは、決めることまで外に出している場合です。
ふたば
決めることまで、というのは。
永瀬
要件定義をベンダーに書いてもらい、見積をそのまま通し、進捗報告を聞くだけの体制です。この席で過ごした人の職務経歴書には「ベンダー管理」と書いてありますが、面接で聞くと、何も決めていない。
ふたば
具体的には、どう聞かれるのですか。
永瀬
「その見積が妥当だと、どう判断しましたか」「ベンダーの提案を断ったことはありますか」の二つで分かります。答えられる人は、自分で要件を整理し、工数の根拠を確かめてきた人です。答えられない人は、会議に出ていただけだと判断されます。
ふたば
SIerで見積を作ってきた経験は、そこで使えそうです。
永瀬
使えます。受託の側にいた人は、見積のどこに余裕が乗るかを知っている。発注側に回ったとき、これは強い武器になります。逆に言うと、SIer出身者が社内SEで価値を落とすのは、発注側に回ったのに判断をベンダーに預けたままにしたときです。
応募の前に、外れの席を見分ける質問
ふたば
求人票と面接で、外れを見分ける方法をまとめて聞かせてください。
永瀬
求人票で三つ、面接で三つ確かめます。求人票から先に。
- 従業員数に対する情シスの人数(数百人の会社で1人か2人なら、問い合わせ対応が業務の中心になる)
- 配属部署の名前と、その上の組織(総務や管理本部の下か、独立したIT部門か)
- 仕事内容の書き出し(ヘルプデスクやアカウント管理が先頭にあれば、それが主業務である)
ふたば
仕事内容は、書いてある順番まで見るんですね。
永瀬
求人票は、時間を使う順に書かれることが多いので。「社内システムの企画、導入」が先頭で、問い合わせ対応が末尾なら企画寄りです。順番が逆で「将来的には企画にも携われます」と添えてある求人は、将来がいつ来るかを面接で聞いてください。
ふたば
面接では何を聞けばいいですか。
- 直近1年で、情シスから提案して始まった案件はあるか
- IT予算は誰が決めていて、情シスの責任者は経営会議に出ているか
- 前任者はなぜ辞めたか、あるいはなぜ増員するのか
永瀬
一つめに具体例が返ってこない会社は、情シスが受け身の部署だと分かります。三つめで「一人で回していた担当が退職した」と返ってきたら、引き継ぎ資料がない状態で全部を背負う覚悟が要ります。
ふたば
一人情シスは避けたほうがいいですか。
永瀬
一律には言えません。裁量が大きく、経営者と直接話せる一人情シスは、次の転職で評価されることもあります。条件ごとの違いは情シスへの転職の記事で整理しています。
すでに社内SEで、辞めるか迷っている場合
ふたば
知人に、社内SEに移って3年で「やめておけばよかった」と言っている人がいます。そういう人はどうすればいいのでしょう。
永瀬
出る前に、今の席で一つだけ試せることがあります。自分から案件を一つ起こすことです。請求書の処理でも、入退社時のアカウント発行でも、手作業が残っている業務を選び、削減できる時間を数えて、上長に提案する。
ふたば
通らなかったら。
永瀬
通らなかったという事実が、出る理由になります。提案が議題にも上がらない会社で年数を重ねても、職務経歴書に書けることは増えません。通った場合は、それがそのまま次の面接で話せる実績になります。どちらに転んでも損をしない試し方です。
ふたば
年収の面では、出たほうが上がるものですか。
永瀬
同じ運用の席へ横に移るだけなら、ほぼ変わりません。上がるのは、役割を変えたときです。経路ごとの金額は社内SEの年収相場に書いています。
ふたば
私の場合は、楽になりたいという動機をどう扱えばいいですか。
永瀬
捨てる必要はありません。順番を変えてください。企画寄りで、投資として扱われていて、判断を自分で持てる席を先に探す。そのうえで残業時間と働き方を確かめる。その順で選んだ社内SEは、納期に追われる働き方からは離れられて、市場での値段も下がりません。
ふたば
楽な席を探すのではなく、まともな席の中から働き方を選ぶ、ということですね。
永瀬
その順番で探した人に、私は社内SEをやめとけとは言いません。
参考データと出典
社内SEの年収は、運用中心の求人と企画中心の求人が同じ職種名で集計されるため、平均値だけでは実態がつかめません。
| データ | 数字 | 時点・条件 |
|---|---|---|
| ネコノテキャリア求人データベース(社内SE、情シス) | 正社員求人1,349件(779社)。提示年収の下限中央値500万円、上限中央値750万円、上限1,000万円以上は17%。タイトルに運用、保守、ヘルプデスク、サポートを含む214件は下限450万円、上限650万円。企画、DX、推進、プロジェクトなどを含む410件は下限500万円、上限800万円 | 2026年10月時点。タイトルに「社内SE」「情シス」「情報システム」のいずれかを含む有効な正社員求人のうち、年収表記のあるもの。提示レンジの中央値で内定時の実額ではない。同じ企業が拠点別や等級別に出した求人を別件として数えている |
| ネコノテキャリア求人データベース(プロジェクトマネージャー) | 正社員求人573件。下限中央値600万円、上限中央値1,000万円、上限1,000万円以上は60% | 2026年10月時点。タイトルに「プロジェクトマネージャー」「PjM」を含み「PMO」を含まない求人。条件は上と同じ |
| doda 平均年収ランキング(2025年) | IT戦略/システム企画 614万円、技術系(IT/通信)全体 469万円 | 2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した正社員約60万件の申告年収の平均。社内SE単体の区分はない |
求人の区分はタイトルの語による機械的な分類で、仕事内容を1件ずつ確認したものではありません。配属組織や外注の体制による違いは、当社が面談と求人の依頼内容から整理した傾向で、統計ではありません。
よくある質問
社内SEはやめたほうがいい職種ですか?
職種として避ける理由はありません。避けたほうがいいのは、問い合わせ対応が業務の中心で、情シスが費用の部署として扱われ、判断まで外部に任せている席です。三つがそろっているかは、求人票と面接である程度確かめられます。
社内SEが「楽」というのは本当ですか?
納期に追われにくい求人が多いのは事実です。ただし残業の少なさと技術要求の低さで求人を絞ると、運用とヘルプデスク中心の席に行き着きます。当社求人データベースでは、この区分の提示年収は下限中央値450万円、上限中央値650万円でした(2026年10月時点)。
社内SEの年収は低いですか?
当社求人データベースの正社員求人1,349件では、下限中央値500万円、上限中央値750万円でした(2026年10月時点、提示レンジの中央値で内定時の実額ではない)。上限が1,000万円以上の求人は17%で、プロジェクトマネージャー求人の60%より少なくなっています。
SIerから社内SEに転職すると後悔しますか?
発注側に回ったあとも判断をベンダーに預けたままにすると、評価される経験が積めず後悔につながります。見積の根拠を確かめ、要件を自分で決める席であれば、受託側の経験はそのまま強みになります。
社内SEを辞めるか迷ったときの判断基準はありますか?
手作業が残る業務を一つ選び、削減できる時間を数えて上長に提案してみてください。議題にも上がらない会社なら、年数を重ねても書ける実績が増えません。通った場合は、次の面接で話せる実績になります。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。