情シスへの転職ガイド|求人の見極め方と選考で評価される経験

情シスへの転職を、求人が少ない理由と求人票の見極め方から解説します。守る情シスと変える情シスの違い、SIerからの転職で評価される経験、選考で落ちる本当の理由まで対話形式でまとめました。

この記事でわかること

  • 情シスの求人は常時出るものではなく、欠員か大型刷新が起きた月にだけ現れる。書類が先、探すのは後
  • 求人の当たり外れは業務内容欄ではなく所属部署名で決まる。管理本部の下か、経営直下か
  • SIerからの転職で見られているのは、作った経験ではなく社内を通して決めさせた経験

永瀬

PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。

ふたば

SIerでインフラ運用と顧客調整を7年続けてきた。事業会社の情シスへ移りたいが、求人が数件しか見つからず、選ばれる基準も分からずにいる。

目次
  1. 情シスの転職で求人が見つからないのは、探し方の問題ではない
  2. 求人票の「情シス」は、守る側と変える側で別の仕事になっている
  3. SIerから情シスへ移るときに読み違えやすいこと
  4. 一人情シスと大企業情シスは、評価が逆転する
  5. 情シスの選考で落ちる理由は、技術力ではない
  6. 情シスに移ったあと、どこへ抜けられるか
  7. よくある質問

ふたば(SIerでインフラ運用7年目)

永瀬さん、情シスへの転職を考えているんですが、そもそも求人が見つかりません。転職サイトで検索しても数件しか出てこないし、出ている求人も業務内容の書き方がどこも似ていて違いが分かりません。私の探し方が悪いんでしょうか。

永瀬(PM・企画職専門エージェント)

探し方は悪くないです。情シスの求人は本当に少ない。ただ、少ない理由を勘違いしたまま探すと、いつまでも見つからないままになります。

ふたば

人気があるから枠が埋まっている、ということですか。

永瀬

逆です。埋まっているのではなく、そもそも枠が生まれない。まずそこから話しましょう。

情シスの転職で求人が見つからないのは、探し方の問題ではない

永瀬

情シスは売上を作る部署ではないので、事業が伸びても人が比例して増えません。数百人規模の会社でも、情報システム部の人数は多くて数人というところがほとんどです。

つまり採用は、誰かが辞めた穴を埋めるか、大きなシステム刷新が決まって一時的に人手が要るか、そのどちらかでしか発生しません。情シスの求人は、常時どこかに出ているものではなく、社内で何かが起きた月にだけ現れます

ふたば

じゃあ、いい求人が出るまで待つという作戦は。

永瀬

成立しません。待っている間に決まります。枠が1つしかない求人は、応募が10人集まった時点で募集を止めることが多いので、公開されてから職務経歴書を書き始める人は、書き上がった頃には対象外です。

それと、辞めた穴が全部求人になるわけでもない。人が抜けたぶんを業務委託や運用ベンダーで埋める会社は多くて、その場合は正社員の枠が消えます。

ふたば

けっこう厳しい話ですね。

永瀬

ただ、裏を返すと競争率の話でしかありません。書類が仕上がっている人にとっては、数が少ないことはむしろ有利です。応募する側の準備が終わっていないだけで脱落する人が、それなりの割合でいるので。

だから情シスの転職では、求人を探す前に書類を作ります。順番が逆になっている人が多い。

求人票の「情シス」は、守る側と変える側で別の仕事になっている

ふたば

数が少ないのは分かりました。ただ、出ている求人の違いも分からないんです。どれも「社内システムの運用・保守から企画まで幅広く」と書いてあって。

永瀬

業務内容の欄は当てになりません。あそこは人事が他社の求人を見ながら書いている文章なので、どこも似ます。見るべきは所属部署名と募集背景です。

見る欄守る情シス変える情シス
所属管理本部、総務部、経営管理部の下経営直下、DX推進室、IT戦略部
募集背景欠員補充、退職者の後任増員、部署新設、基幹刷新に伴う体制強化
予算の性格前年踏襲。減らすと褒められる投資枠がある。使い道を決める人が要る
実際の仕事問い合わせ対応、資産管理、アカウント発行、セキュリティ運用要件整理、ベンダー選定、業務側との調整、全社導入

永瀬

情シス求人の当たり外れは、業務内容欄ではなく所属部署名でだいたい決まります。IT部門が管理本部の下にぶら下がっている会社では、情シスの仕事は「止めないこと」です。予算を使わずに去年と同じ状態を維持した人が評価される。

経営直下やDX推進室に置かれている会社では、評価軸が「変えたか」に変わります。同じ職種名で、求められる成果が正反対です。

ふたば

でも「業務改革をリードしていただきます」と書いてある求人もありますよね。あれは変える側では。

永瀬

そう書いてあって、所属が総務部で体制が3人なら、実態はヘルプデスク兼任です。募集文の景気の良さと、組織図の位置がずれている求人はよくあります。信じるのは組織図のほうです。

面接で確認するなら、この2つを聞いてください。「システムの投資予算は誰が最終決裁しますか」「今期、情報システム部として何を変える計画ですか」。前者に役員の名前が出て、後者に具体的な計画が返ってくれば、変える側です。

ふたば

後者、答えられない会社もありそうです。

永瀬

答えられない会社のほうが多いです。それが答えです。

SIerから情シスへ移るときに読み違えやすいこと

ふたば

正直に言うと、情シスに行きたい理由の半分は、今より落ち着いて働けそうだからです。納期に追われるのもベンダーとして頭を下げるのも、そろそろ疲れました。

永瀬

その動機自体は否定しません。実際、納期の圧は下がることが多い。ただ、代わりに増えるものがあります。決める仕事です。

SIerでは、何を作るかは顧客が決めていました。情シスに移ると、決める側が自分になります。この機能は要る、これは要らない、この見積は高い、この時期にやる。判断を先送りにすると、何も起きないまま半年が過ぎます。

ふたば

それはそれで、しんどそうですね。

永瀬

しんどさの種類が変わるだけです。それと、面接で「落ち着いて働きたい」が透けると落ちます。受け入れる側は、社内システムの守りを固めたいのではなく、動かせる人が欲しくて枠を作っているので。

年収の話もしておくと、SIerから情シスへの転職は同水準か少し下がる例が目立ちます。情報システム部は売上に紐づかない部署で、給与の原資が事業部門と別の考え方で決まるためです。ただし所属によって幅が大きいので、どのくらい動くかは社内SE(情シス)の年収相場のほうで整理しています。

ふたば

私はインフラの運用と、顧客の情シス担当との調整ばかりやってきました。設計や開発の経験は薄いです。不利ですよね。

永瀬

逆です。むしろ本命の経歴です。SIerからの転職で見られているのは、作った経験ではなく、決めさせた経験なので。

顧客の情シス担当と調整していたということは、要件を整理して、選択肢を出して、相手に決めてもらう仕事を7年やってきたということです。情シスの仕事の中身は、それを社内向けにやることです。

ふたば

そう言われると、書けることがある気がしてきました。

永瀬

ただし、書き方には条件があります。「顧客と調整し、円滑に進めた」では通りません。何が対立していて、どの案を出して、いくらの差になったのか。金額か日数のどちらかが1つ入るだけで、読み手の評価が変わります。

逆に危ないのは、客先に常駐して指示どおり手を動かしていた期間が長い人です。年数はあるのに、自分が決めた場面を思い出せない。この場合は転職活動より前に、今の現場で決める側に半歩寄る動きが要ります。

一人情シスと大企業情シスは、評価が逆転する

ふたば

求人を見ていると、社員100人くらいの会社で情シス1人という募集もあります。ああいうのは避けたほうがいいですか。

永瀬

良し悪しではなく、次にどこへ行きたいかで決まります。ここは面談でもよく誤解されているところで、情シスの経験は量ではなく、応募先の規模との相性で評価が反転します

経験大企業の情報システム部に応募数百人規模の情シス責任者候補に応募
一人情シス専門領域が浅いと見られやすい予算・契約・選定まで自分で決めた経験が最有力の材料になる
大企業の分業型情シス担当領域の深さで評価される全体を1人で回した経験がないと見られやすい

ふたば

どちらかを選ぶと、もう一方には戻りにくくなるということですか。

永瀬

戻れなくはないですが、3年を超えると説明が要るようになります。一人情シスは裁量が大きくて成長も速い一方、社内に相談相手がいないので、自分のやり方が世の中の標準からずれても気づけません。そのまま5年経つと、経歴の説明が難しくなります。

入るなら、入る前に出口を決めておくことです。3年で基幹システムの入れ替えを1本やり切って、その実績で次に移る。そこまで決めてから受けるなら、一人情シスは悪くない選択です。

情シスの選考で落ちる理由は、技術力ではない

ふたば

面接では、どのあたりを詰められるんでしょうか。技術的な質問に備えたほうがいいですか。

永瀬

技術で落ちる人は少ないです。落ちるのはだいたい2パターンで、1つめは「入社後3か月で何をしますか」に答えられないこと。

ふたば

「まず現状を把握します」ではだめですか。

永瀬

それだけだと、何も言っていないのと同じです。何を見るのかまで言ってください。資産管理台帳が更新されているか、ライセンスの契約本数と実際の利用者数が合っているか、業務部門が勝手に契約しているサービスがどれだけあるか。3つ挙げれば、現場が想像できている人だと伝わります。

2つめは、前職のやり方を持ち込みそうに見えることです。情シスは既存の担当者と2人3人のチームで働くので、入ってきた人が「前の会社ではこうでした」を繰り返すと、業務が止まります。面接官はそこを警戒しています。

ふたば

改善提案をしすぎるのも、印象が悪いということでしょうか。

永瀬

提案は歓迎されます。問題は順番です。「まず現場の運用を聞いてから、変えられそうなところを一緒に決めたい」と言えば通ります。同じ内容でも、聞く前に断定すると落ちます。

もう1つ、意外と知られていない事情を言うと、情シスの採用は情報システム部長だけで決まらないことがあります。最終の面接に管理部門の役員が出てくる会社では、見られているのは技術の深さではありません。情シスの面接は、技術の答え合わせではなく、社内で嫌われずに変えられる人かどうかの審査です

ふたば

技術の勉強より、話し方の準備をしたほうがよさそうです。

永瀬

準備するのは話し方ではなく、材料です。この3年で誰と揉めて、どう着地させたか。それを2つ用意しておけば、質問がどう来ても答えられます。

情シスに移ったあと、どこへ抜けられるか

ふたば

情シスに入ったら、そこで長く働くイメージでいました。その先の道もあるんですか。

永瀬

あります。ただし、守る側の情シスで5年過ごすと道は細くなります。維持の実績は、他社の選考で読み替えられないので。

抜け先として現実的なのは3つです。1つめは自社のIT企画やDX推進。2つめは、複数ベンダーをまとめた経験を持ち出してのPMO。3つめは、業務部門側に回って業務企画に移るルートです。

ふたば

PMOは、コンサル会社の人がやる仕事だと思っていました。

永瀬

そう思われがちですが、ベンダーの進行管理と社内の合意形成を同時にやっている情シスは、PMOに必要な経験をすでに持っています。名前が変わるだけです。移った先の年収と役割の広がりはPMOのキャリアパスにまとめています。

業務部門側へ回るルートのほうは、システムではなく業務の手順そのものを設計する仕事になります。こちらは業務企画とは何をする仕事かで扱っています。

ふたば

求人の少なさばかり気にしていましたが、その前に用意することがありそうです。

永瀬

順番としては、書類を先に仕上げて、応募先の組織図を見る目を持ってから探し始める。この2つが終わっていれば、月に数件しか出ない求人でも十分に足ります。

逆に、準備をしないまま件数だけ数えていると、半年経っても同じ画面を見ることになります。求人が少ないことは、あなたの結果をまだ何も決めていません。

よくある質問

情シスへの転職は難しいですか?

求人の数という意味では難しい部類です。情報システム部は売上に比例して増員される部署ではなく、採用は欠員補充か大型のシステム刷新に伴う増員でしか発生しないため、1社あたりの募集枠は年に1つか2つにとどまります。一方で、枠が少ないぶん応募者側の準備不足で脱落する割合も高く、決めた実績を書いた職務経歴書が用意できていれば、通過率はむしろ上がります。

SIerから情シスに転職すると年収は下がりますか?

同水準か、やや下がる例が目立ちます。情報システム部は売上に紐づかない部署で、給与の原資が事業部門と別の考え方で決まるためです。ただし下がり方は所属部署によって変わり、IT部門を経営直下に置いて投資予算を持たせている会社では、維持または増額の提示も出ます。応募前に、その会社のIT部門が管理本部の下にあるか、経営直下にあるかを確認してください。

情シスの転職で有利になる資格はありますか?

資格だけで通ることはありません。応用情報技術者やITILは書類選考で目に留まる材料にはなりますが、面接で判断材料になるのは、社内の誰と何を調整し、どの選択肢を選んだかという実績のほうです。資格の勉強に時間を使うより、直近の案件で自分が決めた場面を2つ書き出すほうが、選考には直接効きます。

一人情シスの求人は避けたほうがいいですか?

次にどこへ行きたいかで判断が分かれます。大企業の情報システム部を目指すなら、領域ごとの専門性が浅いと見られやすく不利に働きます。逆に数百人規模の会社の情シス責任者ポジションでは、予算・契約・ベンダー選定まで自分で決めた経験が最有力の材料になります。入るなら、基幹システムの刷新を1本やり切るなど、出口の実績を先に決めてから受けてください。

情シスの求人はいつから探し始めればいいですか?

職務経歴書が仕上がった時点からです。情シスの枠は1名募集が多く、応募が集まった時点で募集を止める会社が多いため、公開されてから書類を書き始めると間に合いません。先に書類を用意し、条件を登録して新着の通知が届く状態にしておき、出た週に動くのが現実的な進め方です。

この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。

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