経営企画と事業企画の違い|求人市場が二つを分けていない理由と選ぶ基準
経営企画と事業企画は求人データベースでも大手の年収統計でも同じ区分で扱われています。線が引かれるのは職種名ではなく担当するPLの単位です。年収の実データと、入社後のギャップを防ぐ確認方法を解説します。
この記事でわかること
- 求人データベースの職種分類でもdodaの年収統計でも、経営企画と事業企画は同じ区分で集計されている
- 線が引かれるのは職種名ではなく、全社の損益を見るか特定事業の損益を見るかというPLの単位
- 提示年収の上限中央値はどちらも1,000万円。差がつくのは会社の規模と任される範囲
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
事業会社の事業企画で3年目。経営企画への異動や転職も選択肢に入れているが、二つの職種の違いがつかめずにいる。
目次
経営企画と事業企画は、求人票の上ではよく似た言葉が並ぶ。中期計画、KPI設計、予実管理、新規事業。読み比べても違いがはっきりしない。
実は、転職市場のほうも両者をきれいに分けてはいない。求人データベースの職種分類でも、大手の年収統計でも、二つは同じ枠に入っている。それでも現場では確かに違う仕事が動いている。どこで分かれているのかを、求人の実データを見ながら整理する。
求人市場は、この二つを区別していない
ふたば(事業会社で事業企画3年目、経営企画への異動も考えている)
前から気になっていたんですが、経営企画と事業企画って何が違うんでしょうか。求人を見ても書いてあることが似ていて。
永瀬(PM・企画職専門の転職エージェント)
似ていますね。というより、市場の側が分けていないんです。
ふたば
分けていない、というのは。
永瀬
当社の求人データベースで「事業企画」を含む求人を検索すると347件出てきます。そのうち内容を確認した7件は、すべて職種分類が「経営企画」でした。事業企画という独立した分類が、そもそも用意されていない。
ふたば
システムの都合ではなく、ですか。
永瀬
都合もありますが、実態に合わせた結果でもあります。dodaの平均年収ランキングを見ると、区分が「経営企画/事業企画」で一つになっている。大手の統計ですら、この二つを分けて集計していません。
ふたば
……分けられないほど近い、ということですか。
永瀬
近いというより、会社によって呼び方が違うだけ、という場合が多い。同じ仕事を、ある会社は経営企画部と呼び、別の会社は事業企画部と呼ぶ。
ふたば
では、違いを気にしているのは求職者だけ。
永瀬
そうなりがちです。ただ、まったく同じかというとそうでもない。求人票の中身を読むと、線が引かれている場所が見えてきます。
線は職種名ではなく、担当するPLの単位に引かれる
ふたば
どこに線があるんですか。
永瀬
誰の数字に責任を持つか、です。全社の損益を見ているか、特定事業の損益を見ているか。
ふたば
単位の違い、ということですか。
永瀬
そうです。求人票の言葉を並べると分かりやすい。
| 見る単位 | 求人票によく出る言葉 | 相手にする人 |
|---|---|---|
| 全社の損益 | 中期経営計画、資本政策、IR、M&A、グループ再編、取締役会資料 | 経営陣、株主、金融機関 |
| 特定事業の損益 | 事業計画、KPI設計、予実管理、新規事業立ち上げ、プライシング | 事業責任者、営業、開発 |
| 両方が混ざる | 経営企画室で新規事業も担当、事業企画部で全社横断PJも担当 | 会社規模による |
永瀬
三つめが実際には一番多い。従業員300人くらいまでの会社だと、そもそも分ける人数がいないので、一人が両方やります。似た構図は業務企画への転職でも起きていて、職種名と実態がずれる点は共通しています。
ふたば
私の会社もそうかもしれません。事業計画も作るし、たまに全社の資料も手伝います。
永瀬
それはむしろ有利です。選考で強いのは、どちらの単位も扱ったことがある人です。全社しか見ていない人は現場の解像度が低いと見られるし、事業しか見ていない人は視野が狭いと見られる。
ふたば
どちらかに寄っているほうが専門性が高いのかと思っていました。
永瀬
専門性で採るポジションではないんです。企画職は、意思決定を成立させる仕事なので。数字を作る技術より、どこまでの範囲を自分の問題として引き受けたかを見られます。
年収はどちらが高いのか
ふたば
率直に聞きたいんですが、年収はどちらが高いんでしょうか。
永瀬
ほぼ変わりません。当社のデータで比べると、こうなります。年代別の内訳は経営企画の年収相場に出しています。
| 区分 | 提示年収の下限中央値 | 提示年収の上限中央値 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 経営企画(正社員求人) | 600万円 | 1,000万円 | 98件 |
| 事業企画を含む求人のうち内容確認した分 | 700万円 | 1,000万円 | 7件 |
永瀬
上限はどちらも1,000万円で並んでいます。下限に差があるように見えますが、事業企画側は7件しか個別確認していないので、この差を実態と読むには足りません。
ふたば
経営企画のほうが格上だと思っていました。
永瀬
よく言われますが、提示額を見る限りその通説は成り立ちません。差がつくのは職種名ではなく、会社の規模と、任される範囲です。上場企業の経営企画で600万円の求人もあれば、同じく上場企業の事業企画で1,100万円を提示している求人もある。
ふたば
実際にそういう求人があるんですか。
永瀬
あります。今回確認した7件でも、上限1,100万円から1,200万円の求人が3件ありました。いずれも職種名は事業企画です。
ふたば
名前で判断してはいけない、と。
永瀬
名前で絞り込むと、条件のいい求人を検索の時点で外してしまうことがあります。
選考で聞かれることは、どちらも同じ
ふたば
選考の対策は変えたほうがいいんでしょうか。
永瀬
ほとんど変わりません。聞かれるのは、数字をどう動かしたかです。
ふたば
計画を作った話ではなく。
永瀬
計画を作れる人はたくさんいるんです。作った計画がどうなったか、そこがずれたときに何をしたかを話せる人が少ない。
ふたば
……作りっぱなしのものが多い気がします。
永瀬
多いです。企画部門の仕事は、作った時点では成果が出ていない。だから経歴書に書けることが「策定した」「立案した」ばかりになる。読む側からすると、それは判断の記録ではないんです。
ふたば
どう書けばいいんでしょう。
永瀬
差分を書くことです。計画に対して実績がどうずれて、原因をどう見て、何を変えたか。数字が悪化した話でもいい。企画職の選考で評価されるのは、うまくいった計画ではなく、ずれたときの対処です。
ふたば
失敗を書いていいんですか。
永瀬
むしろ、それしか判断の証拠になりません。うまくいった話は、外部環境が良かっただけかもしれない。
ふたば
経営企画と事業企画で、聞かれ方が変わることはないんですか。
永瀬
変わるとすれば、相手にする人の違いくらいです。全社側を見ていた人には、経営陣や社外をどう説得したかが聞かれる。事業側を見ていた人には、現場をどう動かしたかが聞かれる。ただ、根っこの問いは同じです。
企画職の経験は、次にどこで使えるのか
ふたば
少し先の話も聞きたいです。企画職を続けた先には、どんな道があるんでしょうか。
永瀬
三つの方向に分かれます。上に上がるか、事業を持つか、外に出るか。
ふたば
上に上がる、というのは。
永瀬
経営企画の部長、執行役員、CFO周辺です。全社の数字を見続けた人が進みやすい。ただ、席の数が少ない。会社に一つか二つしかないポジションなので、待っていても順番が回ってこないことがあります。
ふたば
事業を持つ、というのは事業責任者ですか。
永瀬
そうです。事業企画から事業部長やプロダクトの責任者に移る道です。今回確認した求人の中にも、事業企画のポジションに「将来的には子会社経営や事業責任者へ」と書かれているものがありました。
ふたば
企画から実行側に回るんですね。
永瀬
回ります。しかもこの動き方をした人は強い。計画を作る側と、その計画で走らされる側の両方を知っているので。
ふたば
外に出る、というのは転職ですか。
永瀬
転職と、コンサルやフリーランスです。企画職の経験は他社でも使えるので、市場での流動性は高いほうです。事業を作る側に寄せるならBizDevへの転職も選択肢に入ります。ただ一つ注意があって、会社固有のやり方だけで動いてきた人は、外に出た瞬間に評価が下がります。
ふたば
会社固有のやり方、というと。
永瀬
その会社の中でしか通じない稟議の通し方や、特定の役員の好みに合わせた資料の作り方です。それ自体は社内で成果を出すために必要なんですが、経歴書には書けない。
ふたば
積み上げたものが持ち出せない、と。
永瀬
全部ではないです。ただ、社内調整の巧さは持ち出しにくい。持ち出せるのは、市場や顧客をどう分析して、どんな打ち手を選んだかという部分です。
ふたば
そこは意識しておかないと危ないですね。
永瀬
危ないというより、もったいない。同じ3年でも、記録の残し方で次の選択肢の数が変わります。
どちらに進むかを決める前に確かめること
ふたば
進む方向を決めるとしたら、何を基準にすればいいですか。
永瀬
二つあります。一つは、自分が数字を扱うのが好きなのか、人を動かすのが好きなのか。
ふたば
どちらも必要な気がしますが。
永瀬
必要ですが、比重が違います。全社側は資料と数字に向き合う時間が長い。事業側は会議と調整に時間を取られる。どちらが消耗するかは人によってはっきり分かれます。
ふたば
私は会議が続くと疲れます。
永瀬
それなら全社側のほうが向いている可能性はあります。ただ、経営企画は取締役会や監査法人とのやりとりもあるので、対人が少ないわけではないです。
ふたば
もう一つは何ですか。
永瀬
その会社で、企画部門がどこに置かれているか。社長直下なのか、管理本部の下なのか、事業部の中なのか。ここで仕事の質がまるで変わります。
ふたば
組織図で見ればいいんでしょうか。
永瀬
面接で聞くのが確実です。「企画部門はどのラインに入っていますか」「決裁はどこまで持っていますか」。この二つを聞くと、入ってからのギャップがかなり減ります。
ふたば
聞いても大丈夫なものですか。
永瀬
大丈夫です。むしろ聞かない人のほうが、入社後に「思っていた仕事と違う」となる。企画という名前がついていても、実態が資料作成の下請けになっている部署は普通にあります。
ふたば
……名前で選ばない、というのはそういうことですね。
永瀬
そうです。経営企画か事業企画かを決める前に、その部署がどこに繋がっているかを見たほうが、選択を間違えにくくなります。
参考データと出典
経営企画と事業企画は、公開統計でも同一区分として扱われることが多く、両者を分けた数字はほとんど公開されていません。以下は数え方の違う複数のデータを並べたものです。
| データ | 数字 | 時点・条件 |
|---|---|---|
| ネコノテキャリア求人データベース(経営企画) | 正社員求人98件。提示年収の下限中央値600万円、上限中央値1,000万円。上限1,000万円以上が52% | 2026年8月時点、新着順に抽出。提示レンジの中央値で内定時の実額ではない |
| ネコノテキャリア求人データベース(事業企画) | 「事業企画」を含む有効求人347件。うち内容を確認した7件は下限中央値700万円・上限中央値1,000万円で、いずれも職種分類は「経営企画」 | 2026年8月時点、新着順の上位から抽出。件数が少なく傾向の参考値 |
| doda 平均年収ランキング(2025年) | 経営企画/事業企画 703万円(20代470万、30代684万、40代827万、50代〜928万円) | 2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した正社員約60万件の申告年収の平均。経営企画と事業企画は同一区分で集計されている |
| 求人ボックス 給料ナビ | 経営企画の正社員平均年収 532万円 | 閲覧時点(2026年8月)、掲載求人の給与水準の中央値。地方・中小の求人を広く含む |
| 国税庁 民間給与実態統計調査(令和6年分) | 給与所得者全体の平均給与 478万円、正社員 545万円 | 1年を通じて勤務した給与所得者 |
求人サイトの中央値と登録者の申告平均に開きがあるのは、母集団が違うためです。職種名で年収を比べるより、同じ会社規模・同じ責任範囲の求人どうしで比べたほうが、自分の位置をつかみやすくなります。
よくある質問
経営企画と事業企画の違いは何ですか
担当する損益の単位が違います。経営企画は全社の損益と資本政策を扱い、事業企画は特定事業の損益と成長施策を扱うのが基本です。ただし従業員300人規模までの会社では一人が両方を担当することが多く、求人データベースの職種分類でも両者は同じ「経営企画」に分類されています。
経営企画と事業企画では、どちらが年収が高いですか
提示年収で見るかぎり大きな差はありません。当社データベースでは経営企画の正社員求人98件が下限中央値600万円・上限中央値1,000万円、事業企画を含む求人で内容確認した7件が下限中央値700万円・上限中央値1,000万円でした(2026年8月時点)。差がつくのは職種名ではなく、会社の規模と任される範囲です。
事業企画から経営企画に移ることはできますか
可能です。求人市場では両者が同一区分で扱われており、選考で聞かれる内容もほぼ同じです。全社の損益を扱った経験がない場合は、事業計画と実績のずれをどう処理したかを具体的に説明できるかが判断材料になります。
企画職の職務経歴書では何を書けばいいですか
計画を策定した事実ではなく、計画と実績のずれをどう処理したかを書きます。数字が悪化した事例でも、原因をどう捉えて何を変えたかが書かれていれば判断の記録になります。「中期計画を策定」だけの記述は、読む側に判断の有無が伝わりません。
求人票から企画部門の実態を見分ける方法はありますか
面接で「企画部門はどのラインに入っているか」「決裁はどこまで持っているか」を聞くのが確実です。社長直下か、管理本部の下か、事業部の中かで仕事の質が変わります。企画という名前がついていても、実態が資料作成に限定されている部署もあります。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。