社内SE(情シス)の年収相場は?タイプ別レンジと年収が決まる構造
社内SE・情シスの年収相場を、求人票に並ぶ3つの実態タイプ別に整理します。平均年収が当てにならない理由と、年収が動く人の職務経歴書の違いまで対話形式で解説します。
この記事でわかること
- 社内SE(情シス)の平均年収は中身の違う3職種の合算値で、自分の年収と比べる基準にならない
- 年収レンジを分けているのは技術力ではなく、システムを動かす側か、予算と発注先を決める買う側か
- 書類で評価されるのは守った実績ではなく変えた実績。費用と時間の数字が1つ入るだけで見え方が変わる
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
事業会社の情報システム部で働く社内SE5年目。運用と問い合わせ対応が中心で、調べるたびに違う平均年収と自分の年収を比べては判断がつかずにいる。
目次
ふたば(事業会社の社内SE5年目)
永瀬さん、社内SEの年収について聞きたいです。調べていると平均500万円と書いてあるサイトもあれば、400万円と書いてあるサイトもあって、どれを信じればいいのか分かりません。私は5年目で520万円なんですが、これが高いのか低いのかも判断できなくて。
永瀬(PM専門エージェント)
どちらの数字も間違ってはいないです。ただ、比べる相手としては使えません。社内SE(情シス)の平均年収は、仕事の中身がまったく違う3つの職種を足して割った数字なので。
ふたば
3つの職種、ですか。全部「社内SE」という名前で募集されていますよね。
永瀬
名前が同じなだけです。順番に分解していきましょう。
社内SE(情シス)の平均年収が当てにならない理由
永瀬
平均年収を出しているサイトが集計しているのは、求人票の提示レンジか、登録者の申告年収です。どちらも「社内SE」「情シス」というくくりで一緒くたにされている。
その中には、問い合わせ対応とPCの初期設定が仕事の大半という人と、基幹システムの刷新に数億円の予算を持っている人が同居しています。平均を取れば真ん中の数字は出ますが、その真ん中にいる人はほとんどいません。
ふたば
確かに、同じ部署の中でも仕事の中身は全然違います。私と隣の席の先輩では、やっていることがほとんど重なりません。
永瀬
だから相場を知りたいときは、平均ではなく自分がどのタイプかで見てください。転職市場も、そこしか見ていません。
ふたば
でも求人票にタイプなんて書いていないですよね。
永瀬
書いてあります。年収欄ではなく、業務内容の動詞のほうに。
求人票の「社内SE」には3つの実態がある
永瀬
求人票の業務内容に並ぶ動詞を拾っていくと、社内SEはだいたい3つに分かれます。年収レンジは、この分かれ方とほぼ一致します。
| タイプ | 求人票に並ぶ言葉 | 年収レンジの目安 |
|---|---|---|
| 運用・維持型 | 問い合わせ対応、キッティング、アカウント管理、定期メンテナンス、マニュアル整備 | 400万〜550万円台 |
| ベンダーコントロール型 | 要件整理、ベンダー折衝、進行管理、受入テスト、社内調整 | 550万〜750万円台 |
| IT企画型 | IT戦略、システム企画、予算策定、業務改革、全社導入の主導 | 750万〜1,000万円超 |
ふたば
上に行くほど技術力が高い、ということですか。
永瀬
そこが誤解されやすいところです。この3つを分けているのは技術力ではありません。年収レンジを決めているのは、システムを動かす側にいるか、買う側にいるかです。
買う側というのは、予算と発注先を決める側のことです。ベンダーの見積を見て、この機能は要る、これは削る、この金額は高い、と判断する。判断している人と、決まったものを運用している人とでは、提示される年収が1段変わります。
ふたば
私は……見積は見ています。でも決めるのは部長です。
永瀬
よくある形です。そして残念ながら、転職市場ではそれは運用側として扱われます。判断していない仕事は経歴に書けないので。
ただ、ここは今の会社の中で動かせる部分でもあります。見積の比較表を自分で作って「うちはこの構成でいいと思います」と意見を添えて出す。それを何度か繰り返すと、いつの間にか一次判断が自分に降りてきます。役職を待つより早い。
会社の中で情シスがどこに置かれているか
ふたば
同じタイプなら、会社が変わっても年収は同じですか。
永瀬
変わります。情シスの給与を実質的に決めているのは、その会社がIT部門をコストとして見ているか、投資として見ているかです。コストとして見ている会社では、情シスの予算は毎年削る対象なので、人件費だけ例外になることはありません。
| 会社のタイプ | IT部門の位置づけ | 年収の作られ方 |
|---|---|---|
| 非IT系大手の情報システム部 | 間接部門。予算は削減対象 | 本体の給与テーブル。管理職に上がるまで頭打ち |
| IT子会社 | 親会社のシステム運用の受け皿 | 親会社の等級に準拠。出向か転籍かで条件が変わる |
| 事業会社のIT企画・DX部門 | 投資部門。IT予算の使い道を決める | 中途採用で市場相場が付く。成果で動く |
| IT・SaaS企業のコーポレートIT | 事業を支える技術部門 | エンジニアの給与テーブルに乗ることがある |
| 数百人規模の会社の情シス責任者 | 少人数で全領域を見る | 責任範囲で決まる。裁量が大きく上振れしやすい |
ふたば
うちは完全に1行目です。毎年「システム費用の削減目標」が降りてきます。
永瀬
そこにいる限り、どれだけ良い仕事をしても給与テーブルの上限で止まります。本人の評価とは関係のない話です。
だから年収を上げたいという相談を受けたとき、私は努力の量から聞きません。今いる場所の天井がどこにあるかを先に確認します。天井が見えている場所で頑張り方を工夫しても、届く高さは変わらないので。
ふたば
じゃあ、転職するしかないということですか。
永瀬
その前に確認したいことがあります。書類です。社内SEの方は、ここでかなり損をしています。
職務経歴書に「守った実績」しか書いていない
永瀬
社内SEの方の職務経歴書を読んでいると、毎回同じところで手が止まります。書いてあることが、ほぼ全部「守った実績」なんです。
基幹システムを5年間、大きな障害なく運用しました。ヘルプデスクの一次対応を月200件こなしました。サーバーの定期メンテナンスを計画どおり実施しました。どれも事実で、実際に大変な仕事です。ただ、これを読んだ採用側は、年収を上げる理由を見つけられません。
ふたば
なぜですか。止めずに動かし続けることが情シスの仕事なのに。
永瀬
動いて当たり前だと思われているからです。理不尽ですが、止まらなかったことは成果として計上されません。書類で評価されるのは、変えた実績のほうです。
ふたば
変えた実績というと、システム刷新プロジェクトのようなものですよね。私は関わったことがないです。
永瀬
大きな刷新でなくていいんです。書ける材料は、たいてい本人が実績だと思っていないところに埋まっています。たとえばこのあたり。
- 契約を見直して、使っていないライセンス分の費用を年間で下げた
- 手作業だった申請フローをワークフローに載せて、月あたりの作業時間をなくした
- 相見積を取って比較し、発注先を変えた(またはそのまま値下げを引き出した)
- 全社のPC更新で、機種と調達方法を自分で選定した
- 部署が勝手に契約していたツールを棚卸しして、統合・解約した
- 問い合わせの多い項目をFAQ化して、月間の一次対応件数を減らした
永瀬
どれも守りの日常業務の中で起きたことですが、書き方としては変えた実績です。金額か時間のどちらかが入っていれば、それだけで書類の見え方が変わります。
ふたば
ライセンスの棚卸しは去年やりました。でもあれは、単なる事務作業のつもりでした。
永瀬
そこが社内SEの一番もったいないところです。面談で経歴を書いてもらうと最初は3行しか出てこないのに、こちらから「去年、何かやめたものはありますか」「稟議を通したものはありますか」と聞いていくと、必ず何かしら出てきます。持っていないのではなく、書いていないだけなんです。
ついでに言うと、削減額は正確でなくて構いません。「年間およそ80万円」で十分です。面接で聞かれたときに根拠を説明できれば問題ない。
一人情シスは市場で不利か
ふたば
逆のことも聞いていいですか。知り合いに一人情シスの人がいるんですが、ああいう人は市場では不利ですよね。専門性がつかないと本人も言っていて。
永瀬
それ、本人が思っているのと市場の見方が逆になりやすい典型です。一人情シスは、条件がそろえばかなり強い経歴になります。
ふたば
意外です。何でも屋になってしまうのが問題だと思っていました。
永瀬
成長中の会社の情シス求人が探しているのは、狭い専門家ではなく、全体を見て自分で決められる人です。一人情シスは、ネットワークもアカウント管理も予算も契約も、全部自分で決めてきている。決裁の経験がある情シスは、実はそんなに多くありません。
ただし条件があります。「何でもやってきました」と書くと、逆に何もできない人に見えます。守備範囲の広さを並べるのではなく、その中で自分が決めたことを、金額と判断理由つきで書けるかどうか。ここで結果が割れます。
ふたば
逆に、一人情シスが不利になる場面もあるんですか。
永瀬
大企業の分業された情報システム部に応募したときです。あちらは領域ごとに担当が分かれているので、広く浅い経歴だと当てはめる枠がない。同じ経歴でも、応募先の規模で評価が反転します。
逆に数百人規模の会社の情シス責任者ポジションなら、一人情シスの経験は最有力の材料になります。求人を探すときは、職種名より会社の規模で絞ったほうが早いです。
社内SEが年収を上げる3つのルート
ふたば
結局、私が年収を上げるとしたら何から手をつければいいですか。
永瀬
ルートは3つです。難易度の順ではなく、今いる場所によって選ぶものが変わります。
一つめは、今の会社で買う側に回ること。稟議を書く、相見積を取る、機種や構成を選ぶ。この3つのどれかを自分の名前でやると、経歴の中身が変わります。会社を辞めずにできて、次の転職の提示額に直接効きます。
永瀬
二つめは、箱を変えること。IT部門をコストとして見ている会社から、投資として見ている会社へ移る。仕事の中身が同じでも、これだけで提示額が変わります。ただし、書ける実績がないまま動くと、移った先でも運用側の枠で採用されます。順番としては一つめが先です。
三つめは、職種を越えること。社内SEからIT企画、あるいはPMOやプロジェクトマネージャーへ移るルートです。
ふたば
PMOですか。まったく考えたことがなかったです。あれはコンサル会社の人がやる仕事だと思っていました。
永瀬
そう思われがちですが、ベンダーコントロールをしている社内SEは、PMOに必要な経験をかなり持っています。進行管理、課題の追跡、複数ベンダーの調整、社内の合意形成。日常的にやっていることの名前が変わるだけです。
そして年収の水準が一段上がりやすい。所属によってどれくらい差がつくかはPMOの年収相場で整理していますし、その先の道筋はPMOのキャリアパスにまとめています。社内SEからの越境は、実際に多いルートです。
ふたば
年収の相場を聞きに来たのに、まず自分の仕事の棚卸しからになりそうです。
永瀬
順番はそれで合っています。相場を調べるより先に、この3年で自分が何を決めて、何を変えたかを数えてください。それが1つも出てこないうちは、どの求人に応募しても提示額は今とほとんど変わりません。
逆に、3つ書けるようになった時点で、選べる求人の階層が変わります。5年目で520万円という数字は、そこから動かせる数字です。
よくある質問
社内SE(情シス)の平均年収はいくらですか?
調査によって400万円台から500万円台まで幅がありますが、平均値は仕事の中身が異なる職種を合算した数字のため、自分の年収と比べる基準には向きません。求人票ベースの目安では、運用・維持が中心の役割で400万〜550万円台、ベンダーコントロールを担う役割で550万〜750万円台、IT企画やシステム刷新を主導する役割で750万〜1,000万円超です。まず自分がどのタイプかを判定してください。
社内SEの年収は低いのですか?
役割と会社によります。低く見えるのは、間接部門として位置づけられている会社の運用・維持型の求人が多く集計に含まれるためです。IT部門を投資部門として扱う会社のIT企画ポジションでは、SIerやITコンサルと同水準以上になることもあります。年収を左右しているのは職種名ではなく、システムを買う側の判断をしているかどうかです。
情シスが年収を上げるには資格が必要ですか?
資格単体では上がりません。応用情報技術者やPMPは書類選考で目に留まる材料にはなりますが、面接で年収の根拠として扱われるのは、費用を下げた、業務を変えた、発注先を選んだという実績のほうです。実績を先に作り、資格はその補強として考えてください。
一人情シスの経験は転職で不利になりますか?
応募先の規模によって評価が逆転します。領域ごとに担当が分かれている大企業の情報システム部では枠に当てはめにくく不利になりますが、数百人規模の会社の情シス責任者ポジションでは、予算・契約・選定まで自分で決めてきた経験が最有力の材料になります。書き方としては守備範囲の広さを並べず、自分が決めた判断を金額と理由つきで示してください。
社内SEからPMOやIT企画に移ると年収は上がりますか?
上がりやすくなります。ベンダーコントロールを担っている社内SEは、進行管理・課題の追跡・複数ベンダーの調整といったPMOに求められる経験をすでに持っていることが多く、職種を越えることで年収レンジそのものが1段上がるためです。ただし評価されるのは支援の量ではなく、自分が判断して前に進めた実績です。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。