PMOの年収相場は?所属タイプ別の目安と年収が決まる構造
PMOの年収相場を所属タイプ(コンサルファーム・SIer/SES・事業会社)別に整理します。同じ仕事で年収差がつく構造と、年収を上げる現実的な3ルートを対話形式で解説します。
この記事でわかること
- PMOの年収は450万〜1,000万超に散らばり、差はスキルより所属タイプ(箱)で決まる
- 年収は客先への請求単価から逆算されるため、箱の中の努力には天井がある
- 上げる順番は「推進型の実績づくり→箱を変える転職」。資格は入場券にしかならない
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
SIerで働くPMO2年目。コンサルに転職した同期と年収差が開き始め、自分の年収が相場より低いのか気になっている。
目次
ふたば(SIerで働くPMO2年目)
永瀬さん、いま年収480万円なんです。PMOの同期がコンサルに転職して、聞いたら年収が200万近く上だったんですよ。同じような仕事をしているのに、私の年収って安すぎませんか?
永瀬(PM専門エージェント)
安いかどうかで言えば、SIer所属のPMO2年目としては珍しくない水準です。ただ、その質問の立て方がすでにずれています。PMOの年収は、スキルの差より「どこに所属しているか」でほぼ決まります。同じ仕事で200万差がつくのは、その同期が急に優秀になったからじゃないです。
PMOの年収相場は所属タイプで決まる
ふたば
所属で決まる、というと?
永瀬
求人を見ていると、PMOの年収はだいたい450万から1,000万超まで散らばっています。この幅は個人の能力差ではなくて、所属する「箱」の違いです。整理するとこうなります。
| 所属タイプ | 年収の目安 | その金額になる構造 |
|---|---|---|
| コンサルファーム | 600万〜1,000万超 | 客先への請求単価が高く、給与の原資が大きい |
| SIer・SES | 450万〜700万 | 多重下請けの中間マージンを引いた後に給与原資が決まる |
| 事業会社の社内PMO | 500万〜800万 | 情シス・企画系の給与テーブルに準拠する |
ふたば
やっている仕事はどこも「PMO支援」なのに、こんなに違うんですね。
永瀬
仕事の中身より、発注側がいくら払っているかの差です。ここは業界の内側の話をしますが、PMOの年収は本人の市場価値からではなく、客先への請求単価から逆算されて決まります。ファームのPMOが高いのは、ファームが客先に月200万前後で請求できているから。SESのPMOが上がりにくいのは、間に会社を挟むたびにマージンが抜かれて、給与の原資が細るからです。
箱の中で頑張っても年収に天井がある
ふたば
じゃあ、いまの会社で頑張ってスキルを磨けば、いつかは追いつけますか?
永瀬
きつい言い方をすると、追いつけないことが多いです。箱の中の昇給は年数万円の世界なので、請求単価の差を努力で埋めるのは構造的に無理があります。SESで5年頑張った人が、ファームの入社2年目に年収で負けている。面談をしているとそういう例はいくらでも見ます。
だから年収を上げたいなら、努力の方向は「箱の中で評価される」ではなく「高い箱に移れる実績を作る」に向けるべきです。
年収を上げる現実的な3ルート
ふたば
具体的には、どう動けばいいんでしょう。
永瀬
ルートは3つです。①箱を変える転職(SES→ファームや事業会社)、②役割の格上げ(議事録中心の事務局型から、課題を先回りして潰す推進型へ)、③フリーランス化。
順番が大事で、②が先、①が後です。役割の実績がないまま箱だけ変えようとしても、選考で「高い箱」には入れません。逆に推進型の実績が語れれば、いまの所属がどこでも評価されます。
ふたば
③のフリーランスは、年収で見るとどうなんですか?
永瀬
桁の作り方が変わります。フリーランスPMOの案件は月額制で、私たちのネコノテエキスパートだと100万円/人月未満の案件は扱いません。単純に年換算すれば1,200万ですが、賞与も退職金も社会保険の会社負担もなくなるので、正社員の年収と額面のまま比べるのは雑すぎます。まず副業で試すのが現実的で、その相場観はPMOの副業単価の記事で話したとおりです。
高い箱の選考で見られるもの
ふたば
①の「箱を変える転職」って、実際どのくらい難しいんですか?コンサルファームなんて、自分には無理な気がしてしまいます。
永瀬
思われているような地頭試験ではないです。ファームのPMO採用で見られるのは、経験の棚卸しが構造化されているかどうか。やってきたことを「状況→課題→打ち手→結果」の順で話せるか、です。地力より話の整理です。
一方、事業会社の社内PMOで見られるのは当事者性です。「ベンダーを管理していました」ではなく「自分がプロジェクトを前に進めた」と言えるか。同じPMO経験でも、売り込む面が違います。
ふたば
選考で落ちる人には、共通点があるんですか?
永瀬
ひとつです。業務リストは話せるのに、成果が数字で言えない。「会議体を運営していました」までは全員言えるんですよ。「遅延していた課題の消化率をどう変えたか」まで言える人が、箱を変えられる人です。「何をやったか」ではなく「何が変わったか」を話せない人は、高い箱の選考で落ちます。職務経歴書の段階から、成果の数字で書いてください。
資格は年収に効くのか
ふたば
PMPのような資格を取れば、年収は上がりますか?勉強を始めようか迷っていて。
永瀬
正直に言うと、資格単体で年収は上がりません。PMPやプロジェクトマネージャ試験は入場券です。書類で足切りされない効果はあるし、ファーム系だと持っていて当たり前の空気もある。でも面接で評価されるのは実績で、資格手当が付いても数千円から数万円の世界です。
順番を間違えないでください。推進型の実績づくりが先、資格はその補強です。資格の勉強を理由に実績づくりを後回しにするのが、一番もったいないパターンです。
年代によって評価はどう変わるか
ふたば
私は20代ですが、年代によって評価のされ方は変わりますか?
永瀬
変わります。20代はポテンシャル込みで見てもらえる最後の期間で、箱を変えるコストが一番安い時期です。30代は役割の実績が全てで、事務局型のまま30代半ばを超えると、箱を変える難易度が一気に上がります。40代になると個人の実績に加えて、チームづくりや標準化のような「仕組みを作った経験」を問われます。
ふたば
つまり、20代のうちに動いた方がいい、ということですか?
永瀬
転職するかどうかは別として、実績づくりは今日から始めた方がいいです。よくある失敗が「30代になったら考える」です。30代の選考で問われるのは20代で何をしたかなので、考え始めた時点で手札はもう決まっています。貯金と同じで、実績は必要になってから作れません。
転職を決める前に、今の現場でできること
ふたば
すぐに転職を決められない場合、今の会社の中でできることはありますか?
永瀬
むしろそれが先です。推進型の実績は今の現場で作れます。具体的には3つ。形骸化している会議体があれば、再設計を自分から提案する。課題管理を「記録する仕事」から「期限と担当を決めて督促する仕事」に変える。報告資料には必ず数字の変化(遅延件数、消化率、滞留日数)を入れる。
どれも権限が要らない範囲でできて、半年続ければ職務経歴書に「変えたこと」として書けます。
ふたば
辞令が出るのを待つ必要はない、と。
永瀬
待っていたら一生来ないこともありますからね。転職市場で評価される実績は、辞令や肩書きではなく、自分から取りにいった役割で作られます。半年後に職務経歴書を書く自分のために、今日の現場で仕込んでおく。年収の話は、結局ここに戻ってきます。
モデルケース: 2年で480万から700万台へ
ふたば
ここまでの話を、私の場合に当てはめるとどう動くことになりますか?
永瀬
架空のモデルケースとして、SIer所属・年収480万のPMO2年目で組んでみます。
最初の半年は社内で推進型の実績づくり。会議体の再設計と課題管理の立て直しを自分から取りにいく。転職活動はまだしません。
1年目の後半で、その実績を職務経歴書に落として箱替えの転職。SIerから事業会社かファームに移れば、先ほどの表の水準差で年収は600万前後に乗ります。
2年目は移った先で同じことの繰り返しです。推進型の実績を積んで、2年目の終わりに社内昇給かもう一段の転職で700万台。この動き方なら特別な才能は要りません。
ふたば
魔法みたいな一発逆転はない、ということですね。
永瀬
ないです。あるのは「実績づくり→箱替え」のサイクルを回すことだけ。逆に、このサイクルを知らずに箱の中で10年頑張ってしまう人が本当に多い。知っているかどうかだけで年収の伸び方が変わるので、構造だけは今日覚えて帰ってください。
求人票で年収の正体を見抜く
ふたば
転職するとして、求人票では何を見ればいいですか?提示年収の高いところを選べばいい?
永瀬
金額の前に、業務内容の書き方を見てください。「議事録作成・進捗管理・資料作成」で説明が終わっている求人は、事務局型として値付けされています。その枠で入ると、入社後に推進型の働きをしても値付けは変わりません。「課題解決」「PMO立ち上げ」「標準化の推進」のような動詞が入っている求人を選ぶこと。同じ年収提示でも、その後の伸び方がまるで違います。
ふたば
金額より先に、箱と役割を見る。考え方が変わりました。
年収だけで箱を選ぶと失敗する
ふたば
ここまで聞くと、とにかくファームに行くのが正解に見えてきます。
永瀬
そこは冷静に。年収の高さには対価があります。ファームの高年収は、稼働強度と常に評価され続けるプレッシャーとのセットです。プロジェクトの山場では平日の夜が消えますし、パフォーマンスが出なければ座席もなくなる。事業会社の社内PMOは年収の天井こそファームより低いですが、生活の設計はしやすい。
だから「いくら欲しいか」だけでなく「どう働きたいか」で箱を選んでください。年収表の数字だけ見てファームに飛び込んで、1年で体を壊して戻ってくる人を何人も見ています。それは年収が上がったとは言いません。
ふたば
年収と働き方をセットで考えて、箱を選ぶんですね。
永瀬
そうです。年収は箱で決まる。ただし、どの箱に住むかを決めるのはあなたの生活です。
ふたば
年収の高い求人を探すことばかり考えていましたが、順番が違いました。まず今の現場で実績を作って、それから箱を選びます。
永瀬
それが答えです。求人票の金額は「今のあなた」への値付けでしかありません。半年後の自分の値付けを変える仕込みを、今日から始めてください。
年収の先にあるキャリアの選択肢まで広げて考えたい場合は、PMOのキャリアパスで4方向の道筋を整理しています。
よくある質問
PMOの年収は今後上がっていきますか?
PM人材の不足は続いているので、PMO需要そのものは伸びています。ただし上がるのは課題解決まで踏み込む推進型の年収で、議事録・進捗表が中心の事務局型の業務は自動化やAIに置き換わる圧力がかかり続けます。
フリーランスPMOの収入はどのくらいですか?
月額制で、ネコノテエキスパートの取扱基準は100万円/人月以上です。単純な年換算では1,200万円以上になりますが、賞与・退職金・社会保険の会社負担がなくなるため、正社員の年収と額面のまま比較はできません。
PMOからPMになると年収は上がりますか?
上がりやすくなります。事務局型の支援役から、意思決定して前に進める側へ役割が変わるためです。PMO経験はPMへの王道のキャリアパスで、推進型の実績はそのまま持ち運べます。
PMP資格を取れば年収は上がりますか?
資格単体では上がりません。書類選考の入場券にはなりますが、面接で評価されるのは推進型の実績です。実績づくりを先に、資格はその補強と考えてください。
年収交渉はいつすればいいですか?
内定後のオファー面談が実質的に唯一のタイミングです。入社後は社内の給与テーブルに縛られるため、大きく動かせません。他社の選考状況と実績の数字を持って、入り口で交渉してください。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。