経営企画はやめとけと言われる理由|外で通用しなくなる配属と、続ける価値のある配属の見分け方
経営企画はやめとけと言われる理由を、転職市場での評価から整理します。板挟みの構造、経営企画の四つの型、評価される経験、続けるか出るかの判断基準をPM・企画職専門エージェントが対話形式で解説します。
この記事でわかること
- やめたほうがいいのは激務の経営企画ではなく、意思決定を変えた経験が積めない取りまとめ中心の配属
- 経営企画の求人は下限中央値600万円・上限中央値1,000万円だが、高く買われるのは設計や変革の実績がある人
- 続けるか出るかは、頼まれていない分析を事業部長に持ち込み、議題になるかどうかを半年試せば判断できる
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
メーカーの営業から経営企画に異動して2年目。予算の取りまとめと会議資料づくりに追われ、このまま続けて市場価値がつくのか不安になっている。
目次
「経営企画 やめとけ」と検索する人には二通りいる。花形だと聞いて異動や転職を考えているが、悪い評判が気になる人。もう一方は、すでに経営企画にいて、予算の取りまとめと会議資料に追われながら、これが経営に関わる仕事なのかと疑い始めた人である。
検索して出てくる理由は、板挟み、激務、成果が見えにくい、の三つにほぼ集約される。どれも事実だが、それだけなら他の管理部門にも当てはまる。経営企画に固有の危うさは、忙しさとは別のところにある。転職市場で経営企画の経験がどう値付けされているかを手がかりに、やめたほうがいい経営企画と、続ける価値のある経営企画を分けていく。
経営企画が「やめとけ」と言われる三つの理由
ふたば(メーカーの経営企画に異動して2年目)
営業から経営企画に異動して2年になります。周りからは出世コースだと言われるんですが、ネットで調べると「経営企画はやめとけ」という記事がたくさん出てきて。
永瀬(PM・企画職専門の転職エージェント)
出てきますね。書かれている理由はだいたい三つです。経営陣と現場の板挟みになる、予算や中期経営計画の時期に激務になる、自分の成果が見えにくい。
ふたば
全部、身に覚えがあります。
永瀬
あるでしょうね。ただ、その三つは経営企画という仕事の性質であって、やめる理由としては弱い。人事も法務も板挟みになりますし、経理にも決算期の山がある。
ふたば
では、やめとけと言われるほどではない、ということですか。
永瀬
いえ、本当に離れたほうがいい経営企画はあります。理由が違うだけです。危ないのは忙しい経営企画ではなく、何年いても外で通用する経験が積めない経営企画です。
ふたば
外で通用しない、というのは。
永瀬
面談で経営企画の方の経歴を聞くと、はっきり二種類に分かれます。会社の意思決定を変えた経験を話せる人と、社内の数字と資料を取りまとめてきた人。後者は在籍年数が長くても、転職市場では思ったほど値段がつきません。
ふたば
私は今、完全に後者です。
永瀬
異動して2年なら、まだどちらにも転べます。問題は、その配属先が前者になれる場所かどうかです。
板挟みは、数字を持たない部門の構造から来る
ふたば
板挟みの話を聞かせてください。事業部に数字の修正をお願いすると嫌な顔をされ、役員からは「なぜ達成できないのか説明しろ」と言われる。毎月これの繰り返しです。
永瀬
それは経営企画の立ち位置から必然的に起きます。経営企画は数字を集めますが、数字を作っているのは事業部です。売上もコストも、自分では1円も動かせない。
ふたば
動かせないのに、説明だけ求められる。
永瀬
そうです。権限は事業部長にあり、説明責任だけが経営企画に来る。この構造は会社が変わってもほぼ同じなので、板挟みが嫌で転職しても、行き先が経営企画なら解消しません。
ふたば
それは少し絶望的です。
永瀬
板挟み自体はなくなりませんが、中身は会社によって違います。事業部から数字を集めて役員に渡すだけの経営企画は、ただの伝達役として両側から責められる。一方で、数字の裏にある原因まで事業部と一緒に調べ、打ち手の案を持って役員に上げる経営企画は、同じ板挟みの位置にいても、両側から相談される側に回ります。
ふたば
立っている場所は同じでも、扱いが変わる。
永瀬
変わります。そして転職市場で評価されるのは、相談される側にいた経験だけです。
経営企画という名前の、別の仕事
ふたば
異動してみたら、想像していた仕事と違ったという感覚もあります。戦略を考えるというより、会議の準備ばかりで。
永瀬
経営企画という職種名は、中身の違う仕事をかなり広く覆っています。求人票と面談で聞く実務を並べると、大きく四つの型に分かれます。
| 実態 | 主な仕事 | 外で評価される経験になるか |
|---|---|---|
| 経営管理型 | 予算編成、予実管理、管理会計の整備、経営会議の運営 | 仕組みを作った側なら評価される。回すだけだと弱い |
| 戦略・投資型 | 中期経営計画、M&A、新規事業の検討、資本政策 | 評価される。ただし席の数が少ない |
| 社長室型 | 社長の指示で動く調査、資料作成、特命案件 | 社長の評価は高いが、外では説明しにくい |
| 兼務型 | 総務、IR事務、広報、情シスなどを経営企画の名前で兼ねる | 経営企画の経験としては扱われにくい |
ふたば
私は経営管理型と社長室型の間くらいです。
永瀬
一番多い型です。そして、やめとけという声が出やすいのもそこです。
ふたば
社長室型は、社長に近いぶん有利だと思っていました。
永瀬
社内では有利です。ところが転職の場に出ると事情が変わります。社長の宿題に答え続けた経験は、その社長がいない場所では値段のつけようがありません。何を期待され、どう応えたかが、その会社の文脈の中でしか説明できないので。
ふたば
兼務型はどうですか。
永瀬
求人票の段階で見分けたほうがいい型です。職務内容に総務や庶務が並んでいたら、経営企画の看板で管理部門の何でも屋を探している可能性があります。年収の付き方も含めた見分け方は経営企画の年収相場で整理しています。
転職市場は、経営企画の経験をどう値付けしているか
ふたば
条件面はどうなんでしょう。経営企画は年収が高いと聞きます。
永瀬
当社の求人データベースで経営企画の正社員求人98件を集計したところ(2026年8月時点)、提示年収の下限が中央値で600万円、上限が中央値で1,000万円でした。上限が1,000万円以上の求人は52%あります。提示レンジの数字なので、内定時の実額とは違います。
ふたば
高い水準ですね。
永瀬
高く見えます。ただ、この数字が示しているのは、高く買われる経営企画が一定数いるということで、経営企画なら誰でも高い、ということではありません。
ふたば
高く買われる人の条件は何ですか。
永瀬
職務経歴書に書ける動詞です。「取りまとめた」「作成した」「運営した」しか並ばない経歴は、上限側の求人では書類で止まります。通るのは「設計した」「変えた」「やめさせた」が入っている経歴です。
ふたば
たとえば、どういう経験ですか。
永瀬
事業別の採算が見えなかった会社で管理会計を作り直し、赤字事業の撤退判断につなげた。予算編成の手順を変えて、事業部の見通しの精度を上げた。買収後の統合で、二社の計数管理を一本化した。規模は小さくて構いません。
ふたば
経営会議の資料は毎月作っていますが、それは入りませんか。
永瀬
資料を作ったことと、経営に関与したことは別です。面接で必ず聞かれるのは「その資料で、何の判断が変わりましたか」です。ここで答えが出ない人は、在籍年数に関係なく評価が伸びません。
ふたば
判断が変わった場面、と言われると、すぐには思い浮かびません。
永瀬
一つもなければ、それが今の配属の実態です。逆に一つでもあれば、そこを掘り下げて書くだけで経歴の見え方が変わります。
続ける価値がある経営企画の見分け方
ふたば
今の部署が続ける価値のある場所かどうか、どう判断すればいいですか。
永瀬
四つ確かめてください。
- 直近1年で、経営企画が起点になって決まったことがあるか
- 事業部から、数字の提出以外の相談が来ているか
- 部内に、経営企画から事業責任者や子会社の役員に出た人がいるか
- 自分の担当に、定例業務以外のテーマが一つでも入っているか
ふたば
三つめは、いません。部長は15年ずっと経営企画です。
永瀬
それは重い情報です。人の出口がない経営企画は、会社が経営人材を育てる場所として設計していない。配属された人は、取りまとめの専門職として年数を重ねることになります。
ふたば
四つめは、予算と月次の会議で手一杯です。
永瀬
それなら、自分から一つ取りに行けるかを試してください。月次の数字から気になる事業を一つ選び、原因を調べて事業部長に持っていく。頼まれていない仕事ですが、断られることは少ないはずです。
ふたば
それで状況が変わりますか。
永瀬
変わる部署と変わらない部署があります。持っていった分析が次の会議の議題になるなら、そこは続ける価値がある。上司に「余計なことをするな」と止められるなら、その部署で積めるものは多くありません。半年試せば、どちらかは分かります。
これから経営企画に移る人が、入る前に確かめること
ふたば
営業の後輩が、他社の経営企画に転職したいと言っています。私のような状況にならないために、何を見ればいいですか。
永瀬
入る前に分かることは意外と多くあります。まず求人票の職務内容で、定例業務と非定例のテーマの割合を見る。予算編成、予実管理、会議運営だけが並んでいれば、取りまとめの席です。
ふたば
求人票に「経営戦略の立案」と書いてあることも多いですが。
永瀬
書いてあるだけでは判断できません。どの会社も書くので。面接で、直近1年に経営企画が担当したテーマを具体的に三つ挙げてもらってください。三つとも定例業務なら、求人票の「戦略立案」は飾りです。
ふたば
ほかに見るところはありますか。
永瀬
部署の人数と構成です。3人以下の経営企画は、一人が何でも抱える兼務型になりやすい。逆に10人を超える部署は分業が進んでいて、配属されるチームで仕事が決まります。どのチームの募集なのかを聞かないまま入ると、希望と違う担当になることがある。
ふたば
社長との距離はどうですか。近いほうがいいと思いがちです。
永瀬
近さより、社長以外の役員や事業部長と仕事をする機会があるかを聞いてください。社長としか仕事をしない経営企画は、社長が代わった瞬間に役割がなくなります。複数の役員や事業部と接点を持てる部署のほうが、経験が外に持ち出せる形で残ります。
ふたば
未経験で経営企画に入る場合、年収は下がりますか。
永瀬
提示レンジの下限付近から始まることが多いので、営業で成果給が大きかった人は下がる可能性があります。下がる幅より、2年後に書ける実績が増える席かどうかで判断してください。
経営企画から出るなら、どこへ行けるか
ふたば
もし今の部署が変わらない側だった場合、次はどこに行けるんでしょう。営業に戻るしかないですか。
永瀬
戻る必要はありません。経営企画の経験が使える先は三方向あります。
| 行き先 | 使える経験 | 足りなくなりやすいもの |
|---|---|---|
| 他社の経営企画 | 予算、管理会計、会議体の設計 | 取りまとめ以外の実績。同じ型の部署に入ると状況は変わらない |
| 事業企画・事業開発 | 数字で事業を読む力、役員への説明 | 自分で数字を動かした経験 |
| PMO・業務改革の推進 | 部門をまたいだ調整、進行の管理 | システムやベンダーに関する知識 |
ふたば
営業の経験もあるので、事業企画は現実的に感じます。
永瀬
営業と経営企画の両方を知っている人は、事業企画の選考で強い。数字を作る側と、数字を読む側の両方を経験しているので。二つの職種の線の引かれ方は経営企画と事業企画の違いで詳しく書いています。
ふたば
他社の経営企画に移る場合に、気をつけることはありますか。
永瀬
面接で、経営企画が直近1年に扱った主なテーマを聞いてください。予算と月次報告しか出てこなければ、今と同じ仕事が待っています。M&Aや事業再編、管理会計の刷新のような非定例のテーマが出てくるなら、積めるものが違う。
ふたば
経営企画そのものが悪いわけではなく、配属先の型を選ぶ話なんですね。
永瀬
そうです。やめとけと言われる経営企画と、1,000万円を提示される経営企画は、同じ名前の別の席です。自分がどちらに座っているかは、さっきの四つで確かめられます。
ふたば
まず事業を一つ選んで、頼まれていない分析を持っていくところから始めます。
永瀬
それが通るかどうかで、残るか出るかの答えがほぼ出ます。
参考データと出典
経営企画の年収は、調査の対象によって数字が大きく変わります。求人票の提示年収は内定時の実額とは異なります。
| データ | 数字 | 時点・条件 |
|---|---|---|
| ネコノテキャリア求人データベース | 経営企画の正社員求人98件。提示年収の下限中央値600万円、上限中央値1,000万円。上限1,000万円以上が52% | 2026年8月時点、新着順に抽出。提示レンジの中央値で内定時の実額ではない |
| doda 平均年収ランキング(2025年) | 経営企画/事業企画 703万円 | 2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した正社員約60万件の申告年収の平均。経営企画単体の区分はない |
本文の四つの型は、求人票と面談で聞く実務をもとに当社が整理したもので、公的な分類ではありません。
よくある質問
経営企画はやめたほうがいい職種ですか?
職種として避ける理由はありません。避けたほうがいいのは、予算の取りまとめと資料作成だけで年数を重ね、会社の意思決定を変えた経験が一つも積めない配属です。同じ経営企画でも、管理会計の設計やM&Aに関わる席では評価される経験が積めます。
経営企画が「つらい」と言われるのはなぜですか?
数字を集める立場でありながら、数字を動かす権限は事業部にあるためです。経営陣からは説明を求められ、事業部からは負担を増やす存在として見られやすく、板挟みになります。この構造は会社を変えてもほぼ同じです。
経営企画の経験は転職で評価されますか?
経験の中身によります。「取りまとめた」「作成した」だけの経歴は評価が伸びにくく、「設計した」「変えた」と書ける経験があると評価されます。面接では、作った資料によって何の判断が変わったかを聞かれます。
経営企画の年収はどのくらいですか?
当社求人データベースの経営企画の正社員求人98件では、提示年収の下限中央値が600万円、上限中央値が1,000万円でした(2026年8月時点、提示レンジの中央値で内定時の実額ではない)。上限が1,000万円以上の求人は52%です。
経営企画から転職するなら、どんな職種がありますか?
他社の経営企画、事業企画・事業開発、PMOや業務改革の推進役の三方向があります。数字で事業を読む力と役員への説明経験はどこでも使えますが、事業企画では自分で数字を動かした経験が問われます。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。