BizDev(事業開発)の年収相場|階層別レンジと年収が決まる構造
BizDevの年収レンジが400万円台から1,500万円まで開く理由を、階層と会社タイプの2軸で整理します。ストックオプション込み提示の読み方、年収が上がる人の共通点まで対話形式で解説します。
この記事でわかること
- 年収を決めるのは職種名や年数ではなく、担当事業のPL規模と意思決定への距離
- 等級テーブルがある会社では、入社時の等級がその後数年の年収上限を決める。交渉すべきは金額より等級
- 提示額が跳ねるのは、事業の数字を自分の名前で持っていた人。調整と管理の量では上がらない
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
SaaS企業でBizDev2年目。求人の年収レンジが広すぎて、自分の年収が相場に対して高いのか低いのか判断できずにいる。
目次
ふたば(SaaS企業でBizDev2年目)
永瀬さん、BizDevの年収について聞きたいです。求人を見ていると400万円台から1,500万円まで書いてあって、幅が広すぎて自分の位置が分かりません。今の年収が高いのか低いのかも判断できなくて。
永瀬(PM専門エージェント)
幅が広いのは事実です。ただ、でたらめに散らばっているわけではない。BizDevの年収は職種名ではなく、担当している事業のPLの大きさと、意思決定への距離で決まります。この2軸で見ると、あの散らばりはきれいに整理できます。
ふたば
PLの大きさ、ですか。役職や経験年数ではなく。
永瀬
年数はほとんど関係ないです。順番に見ていきましょう。
BizDevの年収レンジが広い理由
永瀬
まず身も蓋もない話をします。BizDev求人の年収レンジが下は400万円台から始まっているのは、その一部が中身は新規開拓営業だからです。BizDevという名前は求人票の見栄えがいいので、営業職の募集に付けられることがある。
ふたば
名前だけBizDev、ということですか。それ、応募する側からは見分けられるんでしょうか。
永瀬
年収レンジの下限を見れば、かなり分かります。下限が400万円台に置かれている求人は、そのポジションを「未経験でも入れる役割」として設計している。事業の意思決定を任せる前提の募集なら、下限がそこまで下がりません。
もう一つは業務内容の動詞です。「商談」「新規開拓」「アポイント」が並んでいたら営業求人です。この見分け方はBizDevの転職ガイドで詳しく整理していますが、年収を見るときも同じ物差しが使えます。
永瀬
逆に上限側、1,200万円を超えるBizDev求人は、事業責任者に近い役割です。予算を持って、投資判断に関わって、撤退の意思決定にも同席する。同じBizDevという言葉でも、募集している役割の階層がまったく違う。
つまり幅の正体は「経験の差」ではなく「役割の階層の差」です。だから、自分の年収が妥当かを知りたければ、まず自分がどの階層にいるかを確認してください。
役職・階層別の年収レンジ
ふたば
その階層ごとの目安を教えてください。
永瀬
求人票で見かける水準を整理すると、こうなります。企業規模や業界で上下するので、幅として見てください。
| 階層 | 任される範囲 | 年収レンジの目安 |
|---|---|---|
| メンバー | 決まったテーマの実行。提携先の開拓、施策の実行、数字の分析 | 500万〜700万円台 |
| リーダー | 1テーマを企画から実行まで。予算の一部を持つ | 700万〜900万円台 |
| マネージャー | 複数テーマとメンバーを管理。事業KPIに責任を持つ | 900万〜1,200万円前後 |
| 事業責任者・執行役員 | 事業PL全体。投資判断と撤退判断 | 1,200万円以上(株式報酬を除く) |
ふたば
私はメンバーとリーダーの間くらいです。となると600万円台なら妥当ということでしょうか。
永瀬
相場としては妥当な範囲です。ただ、この表の見方で注意してほしいのは、階層は肩書きではなく実態で判定されるという点です。
名刺に「マネージャー」と書いてあっても、予算を持たず、施策の実行だけをしているならメンバー階層として扱われます。逆に肩書きがなくても、事業のKPIを1本任されて、施策の中止判断まで自分でしているならリーダー階層です。転職市場でも、面接官はここを見ています。
ふたば
肩書きは当てにならないんですね。少し怖い話です。
永瀬
逆に言えば、肩書きを待たなくても階層は上げられます。今の会社で予算の一部を任される、KPIを1本引き受ける。それができた時点で、次の転職の提示額が変わります。
会社タイプで年収の作られ方が違う
ふたば
同じ階層でも、会社によって差はありますか。
永瀬
あります。しかも金額の差より、年収の作られ方の違いのほうが重要です。
| 会社タイプ | 年収の作られ方 | 注意点 |
|---|---|---|
| アーリー期スタートアップ | 現金は市場水準かやや低め。ストックオプションで上乗せ | 現金部分だけで前職を超えないことが多い |
| レイター期スタートアップ・上場前後 | 現金水準が上がる。株式報酬は付与割合が小さくなる | 入社時期で条件が大きく変わる |
| メガベンチャー | 等級テーブルが明確。年収は等級でほぼ決まる | 入社時の等級が数年効き続ける |
| 大手の新規事業部門 | 本体の給与テーブルに従う。安定するが上限も決まっている | 成果を出しても事業単独では跳ねにくい |
| 外資系企業の事業開発 | 基本給+インセンティブ。成果連動の比率が高い | 目標未達時の実収入まで確認する必要がある |
永瀬
この表で一番大事なのはメガベンチャーの行です。等級テーブルがある会社は、入社時に置かれた等級が、その後数年間の年収の上限を決めます。入社後にどれだけ成果を出しても、等級が上がらなければ年収は等級の幅の中でしか動かない。
だから交渉すべきは金額ではなく等級です。「あと50万円上げてほしい」より「一つ上の等級で検討してもらえないか」のほうが、3年後の差が大きい。ここを知らずに金額だけ交渉している人が多いです。
ふたば
等級って、応募段階で聞いていいものなんですか。
永瀬
オファー面談で聞けば普通に答えてくれます。「このポジションは何等級で、上の等級との差は何ですか」。等級制度を持っている会社ほど、この質問に慣れています。聞いて失礼になることはありません。
ストックオプション込みの提示をどう読むか
ふたば
スタートアップから声をかけられたとき、「現金は今より下がるけどストックオプションがある」と言われることがあります。あれはどう判断すればいいんでしょう。
永瀬
はっきり言うと、期待値を現金に換算して比較するのはやめたほうがいい。上場するかどうかも、そのときの株価も、誰にも分からないからです。「時価総額◯◯億円になれば◯千万円」という計算式を出す会社がありますが、あれは前提が成立したときの数字であって、約束ではありません。
そのうえで、条件の良し悪しを見るための確認事項はあります。
- 付与株数が、発行済株式総数の何パーセントにあたるか(株数だけ言われても判断できない)
- 行使価格がいくらか。直近の資金調達時の株価との差はどれくらいか
- ベスティング(権利が確定していく期間)の設計。何年勤務で何割確定するか
- 退職したときに権利がどうなるか。行使できる期間はいつまでか
- 税制適格か非適格か(課税のタイミングと税率が変わる)
永瀬
この5つを質問して、明確に答えられない会社は、条件そのものより体制のほうを心配したほうがいいです。付与を決めている会社なら、全部即答できる内容ですから。
判断の基準としては、ストックオプションを差し引いた現金部分だけで生活と納得が成立するかを見てください。株式報酬は当たれば大きいボーナスとして扱う。現金が足りない前提で入ると、事業が伸びる前に生活のほうが先に苦しくなります。
ふたば
「上場したら億」みたいな話に引きずられないようにします。
永瀬
その話をする会社が悪いわけではないです。当たった人が実在するのも本当です。ただ、当たらなかった人の話は誰も発信しないので、目に入る情報が偏る。それだけの話です。
年収が上がる人と、止まる人
ふたば
同じBizDevでも、年収が伸びる人と伸びない人がいますよね。何が違うんですか。
永瀬
面談していて、提示額が跳ねる人には共通点があります。事業の数字を自分の名前で持っていたことです。
「提携先を20社開拓しました」は活動量の報告で、「担当領域の月次売上を、この施策で1.4倍にしました」は事業の数字です。どちらも本人の努力量は同じかもしれませんが、後者しか階層を上げる材料になりません。
ふたば
数字を持たされていない場合はどうすればいいですか。私はまだ、上長が持っているKPIの一部を手伝っている状態です。
永瀬
持たされるのを待たずに、取りに行ってください。上長のKPIのうち、一番動きが鈍い指標を一つ選んで「これを私に持たせてほしい」と言う。断られることはあまりないです。動いていない数字は、上長にとっても悩みの種なので。
止まる人のほうも説明しておくと、典型は「調整と管理がうまくなっていく人」です。社内の合意形成、資料の整備、進行の管理。必要な仕事ですし、感謝もされます。ただ、その延長線上に年収は乗っていません。事業の数字と結びついていない仕事は、どれだけ量をこなしても階層が上がらない。
ふたば
厳しいですね。社内で評価されている人でも、市場では止まっているかもしれないということですか。
永瀬
あります。社内評価は貢献の総量で決まりますが、転職市場の評価は「他社でも再現できる実績があるか」で決まる。この2つは別の物差しです。
それと、年収が動くタイミングも誤解されがちです。転職の瞬間に上がると思われていますが、実際に大きく動くのは担当する事業のPL規模が変わったときです。年商1億円の事業を見ていた人が10億円の事業を任されると、次の転職では前提が変わる。転職はその変化を市場価格に反映させる手続きにすぎません。
オファー面談で確認すること
ふたば
実際にオファーをもらったとき、金額以外に見るところはありますか。
永瀬
4つ聞いてください。どれも遠慮するような質問ではありません。
- 提示額の内訳。基本給、賞与、みなし残業、インセンティブの比率
- そのポジションの等級と、一つ上の等級に上がる条件
- 入社後に持つKPIと、その決定権がどこまで自分にあるか
- 賞与や評価の実績値。目標を達成した場合と、しなかった場合の実収入
永瀬
特に3つめです。年収は結局、入社後に何を任されるかで決まっていく。提示額が同じ2社なら、KPIの決定権が自分にある側を選んだほうが、2年後の市場価値が上がります。
それから、年収交渉について正直に言っておくと、交渉の場はオファー面談ですが、そこで動かせる幅は選考中の評価でほぼ決まっています。何の材料も出さないままオファー面談で「もっと欲しい」と言っても、たいてい端数の調整で終わります。上げたいなら、選考の途中で「他社の選考状況」と「自分が持ってきた数字」を先に共有しておくことです。
ふたば
オファー面談で初めて希望を伝えるものだと思っていました。仕込みが先なんですね。
永瀬
提示額は、面接での評価が固まった時点でほぼ決まっています。契約してから上げようとしても、まあ上がりません。
今の年収が妥当かを判断する手順
ふたば
今日の話を、自分の状況に当てはめるとどうなりますか。
永瀬
3つの順で確認してください。
一つめ、自分の階層。肩書きではなく、予算とKPIの決定権をどこまで持っているかで判定する。二つめ、会社タイプ。等級テーブルがある会社なら、自分の等級と上の等級の条件を確認する。三つめ、持っている数字。他社の面接で「これは自分がやった」と言い切れる事業数字が1つでもあるか。
ふたば
三つめが、今の私にはないです。手伝っている数字はあっても、自分の数字とは言えません。
永瀬
だとすると、今すぐ転職しても提示額は大きく変わりません。順番としては、今の会社でKPIを1本引き受けて、半年から1年で結果を作ってから動くほうが得です。BizDevは事業の数字がそのまま名刺になる職種なので、数字を持ってから市場に出たほうが、選べる求人の階層が変わります。
ふたば
年収の話を聞きに来たのに、今の仕事の受け取り方が変わりました。
永瀬
年収は交渉で作るものではなく、持っている数字で決まるものです。上げたいなら、探すべきは求人より先に、社内で空いているKPIですよ。
よくある質問
BizDevの平均年収はいくらですか?
階層によって大きく変わるため、平均値は実態を表しません。求人ベースの目安では、メンバークラスで500万〜700万円台、リーダークラスで700万〜900万円台、マネージャークラスで900万〜1,200万円前後、事業責任者クラスで1,200万円以上です。同じ「BizDev」という求人名でも役割の階層が異なるため、自分がどの階層かを先に判定してください。
BizDevの年収は営業より高いですか?
役割によります。事業のPLやKPIに責任を持つBizDevは営業職より高い水準になりますが、実態が新規開拓営業のBizDev求人は営業と同じ水準です。求人票の年収レンジの下限が400万円台に設定されている募集は、後者である可能性が高いと考えてください。
ストックオプション込みの年収提示はどう評価すべきですか?
現金部分だけで生活と納得が成立するかで判断し、株式報酬は当たれば大きいボーナスとして扱ってください。評価にあたっては、付与株数の発行済株式総数に対する割合、行使価格、ベスティング期間、退職時の扱い、税制適格かどうかの5点を確認します。これらに即答できない会社は、条件以前に運用体制を疑ったほうがよいです。
BizDevで年収1,000万円を超えるには何が必要ですか?
複数テーマと事業KPIに責任を持つマネージャー階層に上がることが条件になります。そのために必要なのは在籍年数ではなく、事業の数字を自分の名前で持った実績です。担当する事業のPL規模が大きくなるほど提示額も上がるため、規模の大きい事業のKPIを引き受けられるかが分かれ目になります。
転職時の年収交渉はいつすべきですか?
交渉の場は内定後のオファー面談ですが、そこで動かせる幅は選考中の評価でほぼ決まっています。何の材料も出さずにオファー面談で希望額を伝えても端数の調整に終わることが多いため、選考の途中で他社の選考状況と自分が出した事業数字を共有しておいてください。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。