プロジェクト管理にAIを活用するには?PM業務別の使い方と、最初に試す業務の選び方
プロジェクト管理へのAI活用を調べている方へ。計画・会議・進捗・報告などPM業務別にAIの作業と人の確認を整理し、最初に試す業務の選び方、試行の手順、情報管理、効果の測り方を解説します。
この記事でわかること
- AIが担えるのは文章に散らばった情報の整理とたたき台づくり。事実の確認と優先順位の判断は人に残る
- 最初に試すのは、繰り返し発生し、資料が手元にあり、誤りをすぐ確かめられ、誤っても影響が小さい業務
- 効果は利用率ではなく、照合・修正を含めた時間、誤りの件数、判断に使えたかで測る
永瀬
PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。
ふたば
メーカー本社DX推進部の企画担当。部長から「各案件のPM業務に生成AIをどう使えるか整理してほしい」と頼まれ、活用例は集まったものの、どこから始めるかを決められずにいる。
目次
部長から「PM業務に生成AIをどう使えるか調べてほしい」と頼まれ、活用例は集まった。けれど、計画書の下書き、リスクの洗い出し、議事録の要約と並べてみても、自社でどこから始めればよいかが決まらない。
プロジェクト管理にAIを活用するときは、活用例を増やすより、PM業務ごとに「AIに任せる作業」と「人が確認・判断すること」を分け、最初に試す業務を1つ選ぶところから始めます。選ぶ基準は、繰り返し発生すること、元になる資料が手元にあること、誤りを担当者がすぐ確かめられること、誤っても社外や経営判断に影響しにくいことの4つです。
この記事では、業務改善やDXの案件を複数抱える事業会社で、PM業務へのAI活用を調べている担当者に向けて、業務別の使い方、試す業務の選び方、試行の手順、情報管理、組織への広げ方を説明します。AIを開発するプロジェクトの管理や、AI製品のプロダクトマネージャーの仕事は扱いません。
登場人物のふたばはメーカー本社DX推進部の企画担当、永瀬は解説役です。人物・会話・案件は説明用の架空設定です。
活用例を集めても、どこから始めるか決まらない理由
ふたば(メーカー本社DX推進部の企画担当)
部長に頼まれて、PM業務でのAIの使い方を調べました。計画書の下書き、リスクの洗い出し、議事録の要約、進捗レポートの作成と、例はたくさん出てきます。でも「で、うちはどれからやるの」と聞かれたら答えられません。
永瀬
活用例の多くは、AIで何ができるかを機能ごとに並べたものだからです。自社で効くかどうかは、その業務がどれくらいの頻度で発生するか、元の資料がそろっているか、出力を誰が確かめるかで変わります。一覧を読むだけでは、その条件が見えません。
ふたば
各PMに自由に使ってもらう、ではだめですか。
永瀬
個人の工夫としては始められます。ただ、それだと部長に報告できるのは「使っている人がいる」までです。どの業務で、確認にどれだけ手間がかかり、判断に役立ったのかは分かりません。組織として続けるかを決めるには、試す業務と確かめ方をそろえる必要があります。
ふたば
「AI PM」で検索すると、AI製品のプロダクトマネージャーの話も混ざってきます。
永瀬
そこは分けて考えてください。今回調べているのは、業務改善やDXの案件を進めるPMが、管理の仕事にAIを使う話です。AIを開発する案件の管理とは、確認すべきリスクも関係者も違います。
PM業務ごとに、AIに任せる部分と人が持つ部分
ふたば
PM業務のどこにAIを使えるか、整理するとどうなりますか。
永瀬
業務ごとに、AIが担える作業と、人に残る確認・判断を並べると次のようになります。AIが得意なのは、文章に散らばった情報の整理と、たたき台づくりです。事実かどうかの確認と、何を優先するかの判断は人に残ります。
| PM業務 | AIが担える作業 | 人が確認・判断すること |
|---|---|---|
| 計画書・作業分解の下書き | 目的と成果物から、作業の候補や抜けやすい項目を出す | 自社の体制と期限で実行できるか、担当部署の合意 |
| リスクの洗い出し | 似た案件で起きやすいリスクの候補を挙げる | 自社で本当に起きうるか、影響の大きさ、対策の担当 |
| 会議の記録とタスク整理 | 議事録から宿題・決定事項・未決事項の候補を拾う | 担当者本人の引き受け、合意した人の範囲 |
| 進捗の把握と報告 | 計画・課題表・議事録を照らし、食い違いや不足情報の確認案を作る | 現場での事実確認、部長へ上げる判断事項 |
| 複数案件の横断確認 | 案件間の依存関係や、同じ部署への依頼の重なりを確認候補にまとめる | 実際に使える稼働、案件間の優先順位 |
| 関係者への説明資料 | 決まった内容を、相手の立場に合わせた文面の案にする | 数字や約束の正確さ、送ってよい範囲 |
ふたば
どの業務にも、人の確認が残るんですね。
永瀬
残ります。資料にない事実や、口頭だけで決まったことはAIには分かりません。古い資料を渡せば、古い状態を前提に整理します。人の確認を省けると考えて始めると、最初の誤りで使われなくなります。
ふたば
表の中ほどの3つは、実際の手順がイメージしにくいです。
永瀬
会議の記録からのタスク整理は議事録のタスク管理にAIを使う方法、進捗の把握は報告を増やさず進捗管理を効率化する方法、複数案件の横断確認は複数プロジェクトの管理にAIを使う方法で、指示文の例と一緒に説明しています。
最初に試す業務を選ぶ4つの条件
ふたば
部長には、どれから始めるかを提案したいです。
永瀬
次の4つの条件で候補を比べてください。4つとも満たす業務から始めると、効果も問題も早く見えます。
| 条件 | 確かめること | 満たさないと起きること |
|---|---|---|
| 繰り返し発生する | 毎週や隔週など、同じ形で何度も行う業務か | 案件の開始時だけの業務では、試せる回数が少なく判断できない |
| 元の資料が手元にある | 議事録・課題表・計画書が、AIに渡せる形で残っているか | AIが推測で補う部分が増え、確認の手間が増える |
| 誤りをすぐ確かめられる | 出力の正誤を、その場で判断できる人がいるか | 誤りに気づかないまま使われる |
| 誤っても影響が小さい | 社外への送付や経営判断に、そのまま使われないか | 一度の誤りで、組織として使うのをやめる判断になりやすい |
ふたば
うちの候補に当てはめると、どうなりますか。
永瀬
たとえば、ふたばさんの部署で候補が4つあるとします。以下は説明用の仮例です。
| 候補の業務 | 繰り返し | 資料 | 確かめられる人 | 誤ったときの影響 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 週次定例の議事録からタスクを整理 | 毎週 | 議事録あり | 定例に出たPM | 社内の課題表のみ | 最初に試す |
| 各案件の進捗確認案の作成 | 毎週 | 課題表の更新にばらつき | 担当PM | 部長の判断に使う | 課題表をそろえてから試す |
| キックオフ前のリスク洗い出し | 案件の開始時のみ | 過去案件の記録が少ない | 経験のあるPM | 社内のみ | 次の新規案件で並行して試す |
| 経営会議向けの説明資料 | 月1回 | 数字は別の部署が管理 | 作成者だけでは確認できない | 経営判断に使う | 後回し |
ふたば
経営会議の資料がいちばん大変なので、そこから楽にしたかったのですが。
永瀬
気持ちは分かります。ただ、そこは誤ったときの影響が大きく、確かめられる人も限られます。最初の試行で数字の誤りが一度出ると、「AIは使えない」という結論になりかねません。小さい業務で確認の手順を固めてから広げるほうが、結果として早く届きます。
試行は、1つの業務を数回まわしてから判断する
ふたば
試行は、どう進めればいいですか。
永瀬
1つの業務と、協力してくれるPMを決め、同じ手順で数回まわします。週次定例なら4回ほどあると、初回の慣れの影響を除いて比べやすくなります。進め方は次のとおりです。
| 手順 | 決めること | 担当 |
|---|---|---|
| 1.対象を決める | 業務・案件・協力するPM・AIに置き換える手作業 | 調査担当者と部長 |
| 2.使える環境を確認する | 利用が認められたAI、入力してよい資料の範囲、出力の共有先 | 調査担当者と情報システム部門 |
| 3.指示文と出力の形を決める | 出力する項目、推測で補わない規則、根拠の示し方 | 調査担当者と協力するPM |
| 4.毎回、原文と照合する | 誤りと漏れの件数、確認にかかった時間を記録する | 協力するPM |
| 5.続けるかを判断する | 記録をもとに、続ける・直す・やめるを決める | 部長 |
ふたば
3の「推測で補わない規則」は、どの業務でも必要ですか。
永瀬
必要です。担当者や期限、完了したかどうかが資料にないとき、AIはもっともらしい値を入れることがあります。「記載なし」と書かせる規則を最初から入れておくと、確認する人が空欄を見て、何を聞けばよいか分かります。
ふたば
4の記録は、PMの負担になりませんか。
永瀬
項目を絞れば数分で済みます。記録がないと、5で部長が判断する材料がなくなります。次の項目で足ります。
| 記録する項目 | 使い方 |
|---|---|
| AIを使わない場合の作業時間(試行の前に1回測る) | 比較の基準にする |
| AIへの入力から照合・修正までの時間 | 基準の作業時間と比べて減ったかを見る |
| 誤りと漏れの件数、その内容 | 指示文や渡す資料を直す材料にする |
| 出力が判断や次の行動に使えたか | 時間が減らなくても続ける価値があるかを判断する |
情報管理の確認は、試行の前に済ませる
ふたば
情報システム部門には、何を確認すればいいですか。
永瀬
利用が認められているAIサービスはどれか、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっていないか、議事録に含まれる顧客名や個人の情報を入力してよいか、出力をどこに保存して誰に共有するかです。社内に生成AIの利用規定があれば、まずそれを読みます。
ふたば
規定がまだない会社もあると思います。
永瀬
その場合は、社外秘を含まない資料だけで試す範囲を決め、情報システム部門の了承を得てから始めます。規定づくりの参考になる公開資料には、日本ディープラーニング協会が組織向けのひな形として公開している生成AIの利用ガイドラインや、IPAのサイトで公開されているテキスト生成AIの導入・運用ガイドラインがあります。
ふたば
個人で契約しているAIで、先に試してみるのはどうでしょう。
永瀬
業務の資料を個人契約のAIに入れるのは避けてください。便利さを確かめる前に、情報の扱いが問題になって試行そのものが止まります。
個人の使い方を、PM組織の進め方にするには
ふたば
試行がうまくいったら、全PMに広げたいです。
永瀬
広げるときに配るのは、指示文だけでは足りません。どの手作業をやめてAIに置き換えるのか、出力を誰がどこまで確認するのか、確認した結果をどの資料に戻すのか。この3つを一緒に決めて渡します。
ふたば
やめる作業まで決めるんですか。
永瀬
決めないと、今までの手作業の上にAIの確認作業が乗ります。PMから見ると仕事が増えただけなので、使われなくなります。たとえば議事録のタスク整理なら、「書記が議事録の末尾に宿題一覧を手で書く作業」をやめる、と明確にします。
ふたば
部長への報告では、AIの利用率を出せばいいでしょうか。
永瀬
利用率は、使われているかの目安にはなります。ただ、部長が知りたいのは、PMの負担が減ったか、案件の状況を早く正確に把握できるようになったかのはずです。試行で記録した確認時間、誤りの件数、判断に使えたかを報告の中心にしてください。
ふたば
PM業務へのAI活用で、ほかに参考になる資料はありますか。
永瀬
PMI日本支部がプロジェクトマネジメントにおけるAI活用ガイドを公開していて、プロジェクトの立ち上げ段階で使うプロンプトの例などを載せています。自社の業務に当てはめるときは、先ほどの4つの条件で試す業務を選んでください。
自社のPM業務に合わせて、AIの使い方を決めたい方へ
まずは、繰り返し発生し、資料が手元にあり、誤りをすぐ確かめられる業務を1つ選び、数回まわして記録を取ってみてください。それだけでも、AIが効く業務と、先に運用を整えるべき業務を分けられます。
一方で、部署ごとに使えるAI環境や資料の置き場所が違う、PMが兼務で試行に時間を割けない、組織として何をやめるかを決めにくい、といった条件があると、PM業務の進め方そのものを見直す検討が必要になります。
株式会社スナネコが提供する「AI駆動PM」では、プロジェクトの管理方法、情報共有、会議、意思決定の進め方を見直すコンサルティングと、PM・PMOとしての実行支援を行っています。
「どの業務から始めるか」「何をやめてAIに置き換えるか」「誰がどこまで確認するか」を自社に合わせて考えたい方は、AI駆動PMの支援内容・相談窓口をご覧ください。
よくある質問
プロジェクト管理で、AIに任せられる作業は何ですか?
議事録や課題表など、文章に散らばった情報の整理と、計画書や説明資料のたたき台づくりです。事実の確認、担当者の合意、優先順位の判断は人に残ります。業務ごとに、AIの作業と人の確認を分けて決めてください。
最初はどの業務から試せばよいですか?
繰り返し発生する、元の資料が手元にある、誤りをすぐ確かめられる、誤っても社外や経営判断に影響しにくい、の4条件を満たす業務から始めます。週次定例の議事録からのタスク整理は、条件を満たしやすい候補の一つです。
AIの活用効果は、利用率で測ればよいですか?
利用率は、使われているかの目安にとどまります。AIを使わない場合の作業時間と、入力から照合・修正までの時間を比べ、誤りと漏れの件数、出力が判断や次の行動に使えたかを記録してください。
社内に生成AIの利用規定がなくても始められますか?
社外秘を含まない資料に範囲を絞り、情報システム部門の了承を得てから始めます。個人で契約したAIに業務の資料を入れるのは避けてください。規定づくりには、日本ディープラーニング協会などが公開しているガイドラインを参考にできます。
この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。