PMOはやめとけと言われる理由|消耗して終わる人と市場価値が上がる人の分かれ目

PMOがやめとけと言われるのは仕事の中身ではなく置かれる立場が原因です。権限を決める契約構造、職務経歴書で差がつく書き方、掲載中の求人112件の年収レンジから、消耗を抜ける条件を整理します。

この記事でわかること

  • やめとけと言われる原因は仕事の地味さではなく、権限がないのに責任だけ回る立場に置かれること
  • その立場は能力ではなく契約構造で決まる。多重下請けの下位に入ると意思決定の記録が残らない
  • 同じPMO求人でも提示年収は下限中央値600万・上限中央値1,000万円。求められる役割で倍近く動く

永瀬

PM・企画職専門の転職エージェント「ネコノテキャリア」の中の人。オブラートに包まない物言いが持ち味で、相場も裏事情も聞かれれば正直に話す。少し口が悪い。

ふたば

SIerから客先常駐でPMOを3年。調整と資料作成ばかりで、このまま年数だけ増えることに不安を感じている。

目次
  1. 「やめとけ」と言われる理由は、仕事の中身ではない
  2. 権限は、能力ではなく契約構造で決まる
  3. 消耗して終わる人と、値段がつく人の分かれ目
  4. 「PMOを続ければPMになれる」は成り立たない
  5. 転職市場でPMO経験はいくらで扱われているか
  6. それでもPMOを選ぶ理由がある人
  7. 参考データと出典
  8. よくある質問

「PMO やめとけ」で検索する人は、たいていもう答えを持っている。調整ばかりで手応えがない、資料は作るが決めるのは自分ではない、このまま年数だけ増えていくのではないか。そう感じているから確かめに来る。

ただ、この検索でたどり着く記事の多くは「大変だがやりがいはある」で終わる。それでは判断材料にならない。PMOとして消耗して終わる人と、そこから市場価値を上げていく人の間には、性格でも根性でもない、はっきりした分かれ目がある。転職市場でPMO経験がどう値付けされているかを見ながら、その分かれ目を話していく。

「やめとけ」と言われる理由は、仕事の中身ではない

ふたば(SIerから客先常駐でPMO3年目)

最近ずっと考えていることがあって。PMOって、やめといたほうがいい職種なんでしょうか。ネットで調べると、そういう言葉ばかり出てきます。

永瀬(PM・企画職専門の転職エージェント)

出てきますね。ただ、あの手の記事に書いてある理由は、だいたい表面をなぞっているだけです。「地味」「成果が見えにくい」「板挟み」。全部そのとおりなんですが、それはPMOという仕事の性質であって、やめるべき理由ではない。

ふたば

違うんですか。

永瀬

経理も地味だし、法務も板挟みですよ。それでも「経理はやめとけ」とは言われない。PMOだけが名指しでやめとけと言われるのは、仕事の中身ではなく、置かれる立場のほうに原因があるからです

ふたば

立場。

永瀬

はっきり言うと、権限がないのに責任だけ乗ってくる状態に置かれやすい。しかもそれが、本人の能力とはほとんど関係ないところで決まる。ここが厄介なんです。

ふたば

能力と関係ないところ、というと。

永瀬

契約です。誰が誰と契約して、その現場に入っているか。それだけで、同じスキルの人が「頼られるPMO」にも「使われるPMO」にもなる。

ふたば

……あまり考えたことがなかったです。

永瀬

面談していると、この話をした瞬間に表情が変わる人が多い。自分の努力が足りないと思い込んでいた人ほど、そうなります。

権限は、能力ではなく契約構造で決まる

ふたば

契約で立場が変わるって、具体的にはどういうことですか。

永瀬

三つ並べると分かりやすいです。同じ「PMO」でも、入り方がこれだけ違う。

入り方誰の指示で動くか起きやすいこと
事業会社に正社員として所属し、自社のプロジェクトを見る自社の意思決定ライン決定に関与できる。ただし社内政治の中に入る
コンサルファームからPMOとして客先に入る自社の契約範囲と、客先の責任者提案が通りやすい。ファームの看板が効く
SES・準委任で客先常駐し、多重の下請けの下位に入る直接の指示は禁止されているのに、実質は元請けの担当者責任だけ回ってきて、決定には入れない

永瀬

三つめが、いわゆる「やめとけ」の温床です。契約上は指揮命令を受けない立場なのに、実態としては元請けの担当者に細かく動かされる。しかも何か問題が起きたとき、決めたのは自分ではないのに、資料を作ったのは自分なので責任の話が回ってくる。

ふたば

それ、今の現場そのものです。会議で「どうしますか」と聞かれるんですけど、答えると「それは決められる立場じゃないよね」と言われる。

永瀬

よくある話です。その状態が続く限り、何年やっても職務経歴書に書ける実績は増えません。作業の量は増えるのに、意思決定の記録が残らないので。

ふたば

残らない、というのは。

永瀬

「私が何を判断して、その結果どうなったか」が書けないということです。ここが後で効いてくる。

ふたば

逆に、一つめや二つめならいいんですか。

永瀬

いいというより、決定に関与する余地がある。もちろん所属先が事業会社でも、雑務係として扱われている人はいます。ただ、そこから抜ける手はある。三つめは、契約そのものを変えないと抜けられない。

消耗して終わる人と、値段がつく人の分かれ目

ふたば

では、市場価値が上がっていく人は何が違うんでしょうか。

永瀬

経歴書を読んでいると、はっきり二種類に分かれます。作業を書く人と、判断を書く人。

ふたば

作業と判断。

永瀬

「進捗管理を担当」「課題管理表を運用」「週次会議の運営」。これが作業です。書いてあることは事実だし、実際にやっている。でも、これだけだと読み手には何も伝わらない。

ふたば

……私の職務経歴書、そればかりです。

永瀬

たいていそうです。責めているわけではなくて、日々やっていることを正直に書くとそうなる。ただ、採用する側が知りたいのはそこではない。書き方の型はPMOの職務経歴書の書き方に例文つきでまとめてあります。

ふたば

何が知りたいんですか。

永瀬

この人を入れたら、うちのプロジェクトの何が変わるのか。それだけです。だから見るのは、「うまくいっていない状況を、どう捉えて、何を変えて、どう転んだか」の一連。うまくいった話だけでなく、判断を間違えた話でもいい。むしろそちらのほうが評価されることがあります。

ふたば

失敗のほうが評価される、というのは。

永瀬

判断した人しか、失敗を語れないからです。作業していただけの人は、失敗を語ろうとしても「炎上して大変でした」で終わる。自分が何を選んだかがないので。

ふたば

きついですね。

永瀬

きつい言い方をすると、判断の記録がない経歴書には値段がつきません。年数がいくらあっても。書類で落ちる理由の大半はこれです。スキル不足ではない。

ふたば

権限がない現場にいる場合、そもそも判断できないのでは。

永瀬

そこなんです。だから最初に契約構造の話をしました。順番が逆で、判断ができない場所にいると経歴が積めない、経歴が積めないから次の選択肢が減る、選択肢が減るから今の場所に居続ける。この輪から出るのに一番効くのは、頑張ることではなく、場所を変えることです。

「PMOを続ければPMになれる」は成り立たない

ふたば

よく言われるのが、PMOで経験を積めばPMになれる、というキャリアパスなんですが。

永瀬

それ、半分は嘘です。

ふたば

半分。

永瀬

自然にはなれない、という意味で嘘。意識的に取りに行けばなれる、という意味で本当。

ふたば

何が足りないんですか。

永瀬

PMOとPMの間には、能力の差より先に、責任の種類の差があります。PMは納期と品質とコストを引き受ける。引き受けるというのは、失敗したときに自分の判断が問われる立場に立つということです。PMOは支援するので、そこを引き受けていない。

ふたば

業務としては近いことをやっているのに。

永瀬

近いんです。だから余計にややこしい。資料の作成能力や会議の回し方はPMより上手いPMOがたくさんいます。それでもPMになれないのは、引き受けた経験がゼロだからです

ふたば

どうすれば引き受けられるんでしょう。

永瀬

小さくてもいいので、完結する範囲を持つことです。サブシステム一つ、フェーズ一つ、外部ベンダー一社との折衝。範囲が小さくても、そこの結果に責任を持ったなら、それは引き受けた経験になります。

ふたば

今の現場でそれを言い出すのは、正直むずかしい気がします。

永瀬

言えるかどうかは現場によります。ただ、言わないまま3年経つと、経歴書に何も足せていない状態でもう一度この話をすることになる。

ふたば

……。

永瀬

面談で40代のPMOの方とお話しすることがあります。経験は長い。人柄もいい。でも、任せた範囲の話が最後まで出てこない。そうなると、こちらから出せる求人が急に狭くなります。

転職市場でPMO経験はいくらで扱われているか

ふたば

実際のところ、PMOの求人ってどのくらいの条件なんですか。

永瀬

当社のデータベースで正社員のPMO求人を集計すると、提示年収の下限が中央値で600万円、上限が中央値で1,000万円でした。2026年8月時点、112件です。年代別や役割別の内訳はPMOの年収相場で詳しく出しています。

ふたば

思ったより幅がありますね。

永瀬

幅があるのがPMOの特徴です。600万円で募集している求人と、1,000万円を提示する求人が、同じ「PMO」という名前で並んでいる。

ふたば

その差は何で決まるんですか。

永瀬

求められている役割です。求人票の書き方を見ると分かります。「進捗管理、課題管理、議事録作成」と書いてある求人と、「複数ベンダーを横断した推進、経営層への報告、意思決定の設計」と書いてある求人では、そもそも別の仕事です。

ふたば

名前が同じなだけ、と。

永瀬

そうです。だから「PMOの年収相場はいくらか」という問い自体があまり意味を持たない。自分がどちらの側のPMOとして扱われているか、そこを先に確かめたほうがいい。

ふたば

確かめる方法はありますか。

永瀬

求人票を10件くらい読んでみることです。転職する気がなくてもいい。自分の今の仕事が、どちらの書かれ方に近いかを見る。600万円側の書き方に近いなら、そこが今の市場評価です。

ふたば

……見るのが怖い気もします。

永瀬

見ないまま年数だけ増えるほうが、後で怖いことになります。

それでもPMOを選ぶ理由がある人

ふたば

ここまで聞くと、やっぱりやめたほうがいいのかなと思えてきました。

永瀬

いや、そこは分けて考えてください。やめたほうがいいのは、権限のない場所に置かれ続ける状態であって、PMOという職種ではない。

ふたば

続ける価値がある場合もある、と。

永瀬

あります。PMOは、プロジェクト全体を上から見る訓練としては相当いい場所です。PMは自分の担当領域に集中せざるを得ないので、意外と全体が見えていない。複数のプロジェクトを横断して見ているPMOのほうが、組織のどこで物事が詰まるかを知っていることがある。

ふたば

それは、その後どこで効くんですか。

永瀬

事業企画やDX推進の部署に移るときに効きます。あの手の仕事は、決裁権を持たないまま組織を動かす仕事なので、PMOでやってきたことがそのまま使える。進み方の分岐はPMOのキャリアパスで整理しています。

ふたば

PMだけがゴールではない、ということですか。

永瀬

そうです。PMO経験者の転職先で意外に多いのが、事業側の推進ポジションです。年収レンジも近い。ただ、そこでも聞かれるのは同じことです。何を判断したか。

ふたば

結局そこに戻ってくるんですね。

永瀬

戻ってきます。職種を変えても、そこだけは変わりません。

ふたば

今日の話を持ち帰って、まず求人票を読むところからやってみます。

永瀬

それでいいと思います。動くかどうかは、読んだ後で決めれば間に合います。求人の探し方から選考までの流れはPMO転職のガイドにまとめてあります。

参考データと出典

PMOという職種区分を持つ公開統計はほとんど存在しません。公開データはプロジェクトマネージャーの数字で、調査ごとに対象が違うため金額に幅があります。

データ数字時点・条件
ネコノテキャリア求人データベースPMO正社員求人112件。提示年収の下限中央値600万円、上限中央値1,000万円2026年8月時点、新着順に抽出。提示レンジの中央値で内定時の実額ではない
doda 平均年収ランキング(2025年)プロジェクトマネジャー 707万円(20代517万、30代705万、40代855万円)2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した正社員約60万件の申告年収の平均
求人ボックス 給料ナビプロジェクトマネージャーの正社員平均年収 692万円(392万〜1,280万円)2026年7月、掲載求人の給与水準の中央値
厚生労働省 job tag プロジェクトマネージャ(IT)年収 889万円令和7年賃金構造基本統計調査を加工。職業分類が粗く、基盤系SEなど複数職種に同じ値が当てられている
国税庁 民間給与実態統計調査(令和6年分)給与所得者全体の平均給与 478万円、正社員 545万円1年を通じて勤務した給与所得者

同じPMOという名前でも、求人票に書かれた役割によって提示額が倍近く変わります。相場の一点を知るより、自分の担当範囲がどちらの書かれ方に近いかを確かめるほうが、判断の材料になります。

よくある質問

PMOはやめたほうがいいのですか

職種としてやめるべき理由はありません。避けたほうがいいのは、契約構造上、決定に関与できないのに責任だけ回ってくる立場に置かれ続けることです。同じPMOでも、事業会社の正社員として自社プロジェクトを見る場合と、多重下請けの下位で客先常駐する場合では、積める経験がまったく違います。

PMOを続ければPMになれますか

自然にはなれません。PMとPMOの差は能力より責任の種類にあり、納期・品質・コストを引き受けた経験がないままでは選考で評価されにくくなります。サブシステム一つ、フェーズ一つでも、結果に責任を持つ範囲を持つことが必要です。

PMOの年収相場はいくらですか

当社求人データベースの正社員PMO求人112件では、提示年収の下限中央値が600万円、上限中央値が1,000万円でした(2026年8月時点、提示レンジの中央値で内定時の実額ではない)。同じPMOでも求められる役割によって提示額が倍近く変わるため、単一の相場として捉えないほうが実態に合います。

PMOの職務経歴書で評価されるのは何ですか

担当した作業ではなく、判断とその結果です。「進捗管理を担当」ではなく、うまくいっていない状況をどう捉え、何を変え、どう転んだかを書けるかどうかで通過率が変わります。判断を間違えた事例でも、自分が選んだ話であれば評価の対象になります。

PMOからの転職先にはどんな選択肢がありますか

PMのほか、事業企画やDX推進など事業側の推進ポジションがあります。決裁権を持たないまま組織を動かす点が共通するため、PMOの経験がそのまま使えます。年収レンジもPM職と近い水準の求人が出ています。

この記事は、PM・PdM・企画職専門の転職支援「ネコノテキャリア」と副業・業務委託の案件紹介「ネコノテエキスパート」を運営する株式会社スナネコが、実務知見に基づいて制作しています。

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